661685年: アンシャン・レジーム下のフランス、歓迎の地、追放の地1789年:フランス革命における外国人1848年:移民、亡命者、入植者、被植民者1889年:外国人から移民へ1917年:第1次世界大戦から1920年代まで1931年:危機に直面して第2番目の区分である、「1789年:フランス革命における外国人」では、フランス革命の革命当初、5年以上継続して定住している外国人に市民権を付与することが試みられた点が述べられている(写真2左)。また、大規模な国民的祭典のなかで、国民、憲法、国王への忠誠が誓われた1790年の連盟祭や、フランス革命期の理念に傾倒し、ドイツから亡命してフランスへ帰化早稲田教育評論 第 39 巻第1号表1.常設展示の年代区分写真1:第1区分での奴隷貿易に関する展示物(2023年8月17日筆者撮影)1940年:戦時下の外国人と迫害される人々1962年:復興、脱植民地化、移民1973年:移民の政治化1983年: 第一世代、第二世代、第三世代!権利を求める闘いと新たなフロンティアの出現1995年:欧州の時代 現代島の奴隷の身分と規律を定めた、いわゆる「黒人法典」が制定された1685年から、シェンゲン協定によって加盟国の国境管理の撤廃が定められた1995年までの11の年号である。新たな常設展示は、フランス社会の文化的多様性が何に由来し、それが時代とともにどのように変化してきたのかについて、年表や歴史的資料に基づいて表現されるほか、移民の歴史を具体的に想像することができるような証言の提示や、写真や動画、美術作品などの展示がみられる。これらによって多角的な視点から個々の移民を描き出すことが試みられている。以下では、これらの各区分における概要を述べる。(2)常設展示の概要起点であり第1番目の区分である1685年は、フランス領アメリカ諸島の奴隷の身分と規律を定めた、いわゆる黒人法典(le Code Noir)38の制定された年である。移民の歴史の起点をこの年号に定め、移民史と奴隷制度による奴隷の強制移動の歴史を結びつけている点は注目に値する(写真1)。また、1685年は、プロテスタントの信仰を認めたナントの勅令が破棄された年でもあり、これにより30万人近くのカルヴァン派プロテスタントであるユグノーがロンドンとベルリンに亡命し、フランス国外への人口移動が生じた契機となった年でもあった。
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