教育評論第39巻第1号
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136早稲田教育評論 第 39 巻第1号九月十三夜(上杉謙信)〔七言絶句〕・涼州詞(王翰)〔七言絶句〕・月夜(杜甫)〔五言律詩〕・送友人(李白)〔五言律詩〕・送夏目漱石之伊予(正岡子規)〔五言律詩〕・子夜呉歌(李白)〔五言古詩〕・過故人荘(孟浩然)〔五言律詩〕・登高(杜甫)〔七言律詩〕・飲酒(陶潜)〔五言古詩〕・題老梅図(長尾雨山)〔七言絶句〕たとえば、「送友人」(李白)〔五言律詩〕と「送夏目漱石之伊予」(正岡子規)〔五言律詩〕とは「送別詩」で詩型も同じ「五言律詩」であるから、詠作を較べて鑑賞するなどの展開もし得る。その意味では、「送夏目漱石之伊予」(正岡子規)は「古典探究」の八種(五社)に採用され、また「言語文化」の教科書では李白の七言絶句「黄鶴楼送孟浩然之広陵」が多数採られるので、「送別詩」のテーマから対比して考えてみるのも、教材やテーマ間の理解を深める意義ある取り組みとなると考える。「4 見方・考え方を学ぶ 思想─普遍的なもの」の「論語」において、「子貢曰、『貧而無諂、富而無驕、何如。』/子貢問、『師与商也孰賢。』/子路問、『聞斯行諸。』/子貢問政。子曰、『足食、足兵、民信之矣。』/子路問君子。子曰、『修己以敬。』」を読み、「参考」に掲げる「論語と算盤」(渋沢栄一)を学ぶのも、新一万円札の肖像となった渋沢に関わる日本の受容として興味が持たれるであろう。「漢文編第二部」の「1 漢文を味わう 故事成語─さまざまな逸話」に「故事成語」として「画竜点睛」(歴代名画記)「刻舟求剣」(呂氏春秋)「先従隗始」(十八史略)の三つに続いて、所争在弓箭不在米塩(日本外史)を配するのは「敵に塩を送る」という日本のことわざの故事的な教材を意図したものであり、「探究の扉」には「遠慮」という日本に独特なことばにも注目する。かつ、「3 人の思いを読み取る 漢詩─悲恋のうた」に「漢詩」の「長恨歌」(白居易)と採り上げ、「参考」に「源氏物語(桐壺)」、「コラム」に「長恨歌と平安文学」、「探究の窓」に「今に生きる漢詩」を通して学びを深め、かつ「6 未来を思いえがく 伝奇小説─二人の李徴」は、「人虎伝」(李景亮)を採録するとともに、「参考」に「山月記」(中島敦)を配し、較べ読みとしても古文と小説のバランスに配慮している。まさに編集方法は多種多様で、それぞれの味わいを創り上げている。〔3〕「古典探究」教材小話 三題2018年告示の「高等学校学習指導要領」によって、我が国の言語文化への理解を深め、その担い手の自覚を涵養することを主眼にして全生徒履修の科目として新設された「言語文化」に対して、「古典探究」は選択科目として、そこに養われた「伝統的な言語文化に関する理解」を深化させ、血肉化させるべく、その古典を学習することを通して、古典の意義や価値を探究する資質・能力を育成する役割をになう。その意味で、カリキュラムや教材を含めた科目間の連帯連携も必須であり、二つの科目を包括した視点から教材に関して述べてみたい。◎ 張継「楓橋夜泊」詩と古典2022年度にスタートした「言語文化」の漢文教材を一覧して寂しさを覚えたのは、唐・張継の「楓橋夜泊」詩の採用が桐原書店の1種のみであることであった(1)。改訂前の『高等学校学習指

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