135「古典探究」教科書の漢文教材をめぐって野中兼山(『先哲叢談』)「2 詩Ⅰ」には、「近体詩─八首」として、宿建德江(孟浩然)〔五言絶句〕・登鸛鵲楼(王之渙)〔五言絶句〕・江雪(柳宗元)〔五言絶句〕・勧酒(于武陵)〔五言絶句〕・磧中作(岑参)〔七言絶句〕・江南春(杜牧)〔七言絶句〕・杜少府之任蜀州(王勃)〔五言律詩〕・黄鶴楼(崔顥)〔七言律詩〕の八首を採り、途中に「参考」として「登鸛鵲楼」(会津八一)と「勧酒」(井伏鱒二)を配している。これに対して、「日本の漢詩─二首」としては、聞旅雁(菅原道真)〔七言絶句〕・送夏目漱石之伊予(正岡子規)〔五言律詩〕を採り、この「日本の漢詩」の部分は、すでに示した同社①『新編古典探究』の「漢文編Ⅱ部」「5 日本の漢詩文」の単元の場合と同様に、両詩を掲げるとともに、「言語活動 漢詩の作り方を知る」、「漢文の窓1」として「明治の文豪と漢詩」を用意する。◎ 筑摩書房の『古典探究 漢文編』は、「第一部」「第3章 韻文の表現─近体詩」において、まず中国の詩篇九篇を並べ、独坐敬亭山(李白)〔五言絶句〕・登楽遊原(李商隠)〔五言絶句〕・九月九日憶山東兄弟(王維)〔七言絶句〕・芙蓉楼送辛漸(王昌齢)〔七言絶句〕・楓橋夜泊(張継)〔七言絶句〕・野望(王績)〔五言律詩〕・旅夜書懐(杜甫)〔五言律詩〕・八月十五日夜、禁中独直、対月憶元九(白居易)〔七言律詩〕・遊山西村(陸游)〔七言律詩〕その後に、次の日本の三篇の詩篇を配する。聞旅雁(菅原道真)〔七言絶句〕・即事(新井白石)〔五言律詩〕・無題(夏目漱石)〔七言律詩〕「第4章 言動の記録─史伝」には、『史記』に基づく「天道是邪、非邪」「鴻門の会」「四面楚歌」に続いて、稲葉一徹(大槻磐渓)(『近古史談』)「第5章 物語の創造─小説」には、「王昭君」(『西京雑記』)に対する「参考」として「王昭君」(李白)と「王昭君をよめる」(赤染衛門)の間に、王昭君(大江朝綱)〔七言律詩〕を示している。さらに「第二部」では「第2章 主張と文体─文章(一)」には、「詩経大序」(『詩経』)の後の「参考」に、古今和歌集真名序(紀淑望)を配し、「第4章 言動の真意─史伝」には、『史記』に基づく「怒髪上衝冠」「刎頸之交」「国士無双」の後に、信玄何在(頼山陽)(『日本外史』)。を配する。これらの日本の詩文を「詩」「序」「史伝」を扱った単元の中で中国の詩文と対比的に捉えることは、いわゆる「日本漢文」の受容と特徴の理解と把握に有効であろう。◎ 文英堂の『古典探究』は、「第一部」の「3 漢詩の世界を味わう 漢詩─悠久の調べ」には「漢詩」として日中の作品を織りまぜて都合十三首を配列する。鹿柴(王維)〔五言絶句〕・楓橋夜泊(張継)〔七言絶句〕・望廬山瀑布(李白)〔七言絶句〕・
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