133「古典探究」教科書の漢文教材をめぐって源平合戦ゆかりの「壇ノ浦」と『解体新書』の筋肉の動きや働きを書いた「筋篇」を挙げる。「6 □長恨歌□と日本文学」には、もちろん中唐の白居易の長篇詩「長恨歌」の全百二十句をすべてテキストに採用すると同時に、日本の古典との関わりから、源氏物語:桐壺(紫式部)・枕草子:木の花は(清少納言)・謡曲:楊貴妃(金春禅竹)を取り上げ、「漢文の窓 8」として「『白氏文集』と日本文学」、「単元の言語活動 6」に「日本漢文における□長恨歌□受容の諸相を探る」を用意して、盛り沢山である。◎ 大修館書店の①『古典探究 漢文編』・②『精選古典探究』の二種は、第一部に「6 日本の漢詩文」と題して、「漢詩」と「逸話」に分けて、「漢詩」には、不出門(菅原道真)〔七言律詩〕・冬夜読書(菅茶山)〔七言絶句〕・桂林莊雜詠 示諸生(広瀬淡窓)〔七言律詩〕・将東遊題壁(月性)〔七言律詩〕・題自画(夏目漱石)〔七言絶句〕以上の五首を採録し、「逸話」には、所争在弓箭(頼山陽)の題で、「敵に塩を送る」で名高い頼山陽の『日本外史』の文を採り、「参考」に「題不識庵撃機山図」(賴山陽)〔七語絶句〕を配するのは、三省堂の場合と同様である。◎ 桐原書店の『探究 古典探究 漢文編』は、「4 日本の漢文」のタイトルを掲げて、対花懐昔(義堂周信)〔七言絶句〕・題不識庵撃機山図(頼山陽)〔七言絶句〕・夏夜(江馬細香)〔七言絶句〕・思君(中野逍遙)〔十首連作の其一・其二 五言絶句〕の四首をもって構成する。女流詩人の江馬細江を採るのは唯一で、堪能的な色香の漂う詩篇は斬新である。中野逍遙は正岡子規と夏目漱石に同じく慶応三年の生まれで、二十七歳で夭折した人材であり、その「君」への情念の表出が独特でもある。「コラム1 日本漢詩─模倣から創作、そして鑑賞する古典へ」を挟んで、川中島の戦い(頼山陽)を『日本外史』から採る。◎ 東京書籍の①『新編古典探究』は、「漢文編Ⅱ部」に「5 日本の漢詩文」の単元に、「詩─二首」として、聞旅雁(菅原道真)〔七言絶句〕・送夏目漱石之伊予(正岡子規)〔五言律詩〕の両詩を掲げるとともに、「言語活動 漢詩の作り方を知る」、「漢文の窓5 明治の文豪と漢詩」を用意する。この詩に対して、文としては「信玄と謙信」の項目で、所争不在米塩(『日本外史』〔頼山陽〕)諸将服信玄(『日本外史』〔頼山陽〕)を掲げ、「参考」として同じく『日本外史』から「四隣頗聞信玄死」を示す。まさに信玄と謙信という二人の武将を捉えた構成をとる。以上は「日本の漢詩文」や「日本人と漢詩文」といったタイトルで「日本漢文」を一括して採録するものであるが、これに類して、漢詩を標題とする単元の中に「中国の詩」と「日本の詩」の項目を立てて構成する教科書もある。◎ 第一学習社の①『高等学校 古典探究 漢文編』・②『高等学校 精選古典探究』・③『高等学校 標準古典探究』の三種は、「漢文編・第Ⅰ部」に「漢詩の鑑賞」の単元を設け、「中国の
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