わたなお、『日本外史』の文の「参考」として「鞭声粛々夜河を過〔2〕「日本漢文」の掲載方法について2023年度に使用開始となった「古典探究」の教科書は、『高等学校用教科書目録(令和5年度使用)』(令和4年4月、文部科学省)によって検定済教科書が14種・22点であり、出版社は9社であることが分かる。これは令和6年度も同様である。それらの教科書を一覧する時、今次の改訂における眼目でもあった「日本漢文」に関してはどのような教材がどのように採用されているのかが気になるところである。この編纂・編集に関わる観点に立ってみると、その掲載の方法は、対象となる「日本漢文」の作品を、一つには「日本の漢詩文」「日本人の漢詩文」「日本の漢文」といったタイトルのもとに集約する方法や、ジャンル等による単元の中で中国の作品と日本の作品とを区分して採り上げる方法が行われる一方で、同じ単元の中に中国と日本の作品を混在させる方法とが認められる。編纂の方法はおよそ上記のように大別されることが分かるが、取り上げる「日本漢文」の作品数は編集方針によって点数に多寡の差も認められる。以下には、具体的に教科書を眺めながら一覧してみたい。作品の後の部分にある〔……〕内の記述は筆者の注記となる。A.「日本漢文」をまとめて取り上げる教科書◎ 三省堂の『精選古典探究 漢文編』は、「日本漢文」をまとめて取り上げるものの中で、最も多くの作品を採り上げている。「漢文編 第一部」に「七 日本の漢詩文」の項目を立てて、まず次の漢詩七首を作者の時代順に配し、詩型は五言・七言の絶句と律詩とで構成される。自詠(菅原道真)〔五言絶句〕・山茶花(義堂周信)〔七言絶句〕・夜下墨水(服部南郭)〔七言絶句〕・悼亡(大沼枕山)〔七言律詩〕・無題(夏目漱石)〔五言絶句〕・送夏目漱石之伊予(正岡子規)〔五言律詩〕・航西日記(森鷗外)〔日記の文と七言絶句〕続けて名高い「池亭記」や「敵に塩を送る」のことわざで知られる『日本外史』の「取塩於我国」(「所争在弓箭不在米塩」「所争在弓箭」「所争不在米塩」をタイトルとする教科書もある)文に加えて、マイナーであるが林鶴梁の文を採録する。池亭記(慶滋保胤):本朝文粹・取塩於我国(頼山陽):日本外史・桜巒春容(林鶴梁):鶴梁文鈔「題不識庵撃機山図(頼山陽)〔七言絶句〕の一首を挙げている。◎ 明治書院の『精選古典探究 漢文編』では、「後編」の「5 日本人と漢詩文」と「6 □長恨歌□と日本文学」を用意する。「5 日本人と漢詩文」では、「日本人の漢詩文」の概説の後に、読家書(菅原道真)〔七言律詩〕・九月十三夜(上杉謙信)〔七言絶句〕・夜下墨水(服部南郭)〔七言絶句〕・送夏目漱石之伊予(正岡子規)〔五言絶句〕・題自画(夏目漱石)〔五言絶句〕・無題(夏目漱石)〔七言絶句〕菅原道真から時代順に夏目漱石まで配し、漱石は二首を掲出する。文には、壇ノ浦(『日本外史』)・筋篇(『解体新書』)132早稲田教育評論 第 39 巻第1号る」の詩吟でも人口に膾炙する
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