130早稲田教育評論 第 39 巻第1号い」の中で、「古典としての古文及び漢文」が「近世までに書かれた古文と漢文のことである。」と明記し、そこに含める「日本漢文」についても、「上代から近世に至るまでの間に日本人がつくった漢詩と漢文とをいう。」と記すとともに、これは本来、古典としての漢文に含まれるものである。我が国の文化において漢文が大きな役割を果たしてきたことや、日本人の思想や感情などが、漢語、漢文を通して表現される場合も少なくなかったことなどを考え併せると、日本漢文の適切な活用を図る必要があり、ここで改めて示している。と、その教材としての意味合いを説く。同時に、「論理的に考える力を伸ばすよう、古典における論理的な文章を取り上げること。」についても、従来の「古典を読む学習では、教材として文学的な文章を重視する傾向がある。」との認識に立って、例えば、古文の歌論や俳論などの評論、漢文の思想など、論理的に考える力を伸ばすため、教材としてふさわしい古典における論理的な文章も存在する。これらを、古典としての古文及び漢文の教材として取り上げることを示している。と解説するのは、「文学」と「論理」の二項対立的な科目をめぐる問題も絡んでいるように考えられる。また、「必要に応じて、近代以降の文語文や漢詩文、古典についての評論文などを用いることができること」に関しても、必要に応じて用いることができることとしていることから、指導のねらい、生徒の興味・関心、指導の段階や時期などに配慮し、親しみやすく効果的なものを用いることが大切である。と弾力的である。「近代以降の文語文や漢詩文」に関しても、時代的な範囲では古典に含まれないが、近代以降にあっても、古典の表現の特色を継承した優れた作品などがある。と、「古典としての古文及び漢文」を「近世までに書かれた古文と漢文」とする時代的な枠組みを踏み越えることに配慮した説明を加え、「古典についての評論文など」についても、近代以降の文章にも、古典の翻案などのほか、古典の魅力や現代的な意義などを平易な言葉で記した解説は多く、指導の段階や時期などに配慮し、親しみやすく効果的なものを適切な分量で教材として扱うことで、古典の作品や文章の価値について考察すること、言語文化の変遷についての理解を深めること、古典についての興味や関心を広げることなどに資することができるためである。と、古典の翻案や解説などがもつ古典の価値や言語文化の変遷および古典への興味関心を広げる意味を説く。次いで、『高等学校学習指導要領』第2章第1節第2款第6「古典探究」の3「内容の取扱い」(3)に示される「教材」の留意事項「イ」の、イ 内容の〔思考力、判断力、表現力等〕の「A読むこと」の(2)に掲げる言語活動が十分行われるよう教材を選定すること。に関しては、教材の選定に当たっては、古典に親しむ態度を育成すること、読むことの能力を育成するこ
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