125子どもの読書活動と「家読」の推進に関する一考察─日中の公共図書館の比較から─カードで利用者からの外国語図書に関する意見・要望を集める」、「毎月第4土曜日には韓国語・日本語の2か国語によるお話し会を開催する」という多文化サービスに力を入れている。大久保図書館では、書籍の購入に関しては、外国語を扱う専門書店と相談して国籍ごとの区内の人口を考慮し、近隣の幼稚園・小学校と連携しながら計画的に行っている。また、多言語によるイベントでは絵本が活躍している。お話し会は、月に一回のペースで英語と日本語、韓国語と日本語によって実施している27。外国ルーツの子どもに限らず、日本人も参加し、その国の写真や服飾などの文化を紹介する展示も合わせて行うことで、文化の相互理解の場をめざしており、大変に好評であるという。「おはなし森のわくわくキャンプ」では、子どものアウトドア活動を推進しているNPOと連携して開催されている。会場内にテントを張り、参加者がその中で自由に絵本を読むことができるようにしている。また、ミャンマー語、タガログ語、タイ語のネイティブ話者を別のNPOから派遣してもらい、各言語での読みきかせも行っている。このようなイベントは、外国の方に母文化を感じてもらうだけでなく、日本人に異文化を知ってもらうことも目的としている。また、イベントの中で図書館の蔵書を紹介することは、図書館に関心を持ってもらうきっかけにもなる。外国人住民にとって日本人と交流する場を見つけるのは難しい。同館では、NPO多言語多読の協力を得ながら、やさしい・簡単な日本語で書かれた絵本をみんなで沢山読む、ビブリオバトルとして外国人と日本人が一緒に一人5分でおすすめの本を発表し合い、その魅力を日本語で紹介するなどの活動にも取り組んでいる。同館では、アラビア語、ミャンマー語、ネパール語、タガログ語といった少数言語も大事にしており、多文化図書コーナーにはこれらの言語による本が置かれている。本稿執筆者の1人は、大久保図書館に訪れたことがあるが、その時同行していたネパール人の男性が、ネパール語の絵本を見て、「自分の母国の本が置かれているのを見て、自分がこの街に受け入れられている気がして、本当に嬉しい。自分もできれば、ネパール語の本を、この図書館に寄贈したい」と語っていた(2024年3月21日、小林)。多文化共生の取り組みにおいて、公共図書館が極めて重要な役割を果たすことを実感した瞬間だった。同館では、館内情報の表示をやさしい日本語および多言語で行っている他、また図書館スタッフは日本人に加えて、中国出身・韓国出身者がおり、その国の利用者に積極的に話しかけることが利用者にとって心強い。大久保図書館は安心のできる場所になっている。図書館とは、知りたい情報が得られる、知る権利が保障される場であり、多文化サービスの基本である。地域の特性に影響されるが、日本ではまだ外国語資料や外国語を話すことができる職員が少ない。「知りたいことがあれば図書館に来てください。わからないことがあれば聞いてください」という図書館側の開かれた姿勢が重要である。図書館は居心地の良い場だと実感できるために、地域の教育機関、国際交流機関と連携し継続性のある活動が求められている(分担執筆:坂内夏子)。
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