121子どもの読書活動と「家読」の推進に関する一考察─日中の公共図書館の比較から─ことを決意した。顔氏は自宅の車庫を公益図書館に改造し、建築設計士である友たちの力を借りて、2階建ての木造公益図書館である港頭公益図書館を開設した(2016年6月1日)。村民の他に、流動児童や留守児童も利用しており、顔氏は、「この図書館は地元の子どもと比べ、「流動児童」の子どもにとってさらに不可欠」と述べた。農民工は生活も不安定であるため、彼らの家には子どもに勉強させるためのテーブルさえないこともある。また、仕事も忙しいので、子どもにしつけや教育する機会も少ない。港頭公益図書館は、このような教育機会に恵まれない農民工の子どもにとって、活動や読書、勉強ができる場所であり、安心して過ごせる居場所でもある。2.4.3 港頭公益図書館で展開されている流動児童、留守児童に向けた読書活動港頭公益図書館は、厦門市内の大学と連携して、多くのイベントを展開している。例えば、厦門医学院と連携して口腔疾患予防をテーマとしての講座を開催した。厦門医学院歯学部の大学生は絵を見せながら、歯の構造を子どもに説明した。子どもたちに粘土で歯の人形を作ってもらって、それぞれの子どもは、自分の個性に合わせて、歯に帽子、王冠などのかざりを加えた。このようなイベントを通じて、子どもたちが歯の知識を楽しく勉強するだけではなく、自分の歯を大切にするように習慣づける。多くの流動児童や留守児童が存在している港頭村においては、親の教育水準と社会的地位が比較的に低いと見られる。多くの家庭においては、子どもの生活習慣や健康意識の養成に乏しいため、このような健康講座の開催により、家庭環境に恵まれない子どもの健康水準の向上に役割を果たしている。また、港頭公益図書館は厦門理工大学と連携し、大学生ボランティアによる子どもに性教育に関する絵本の読み聞かせ活動も開いた。このイベントで、子どもたちは絵本を見ながら性教育に関する知識を学び、自分の体を認識し、自分を守る方法を学んだ。ボランティアは絵本を使って子どもに感情教育を行い、自分の感情をいかに認識し、コントロールする方法まで教えていた。さらに、大学生ボランティアは子どもと一緒に感情表現の顔を描いて、子どもの興味を引き出した。港頭公益図書館は、国際子どもの日(2024年6月1日)には、「あなたの好きな本を一冊」のイベントを行った。子どもたちに好きな一冊の本を書いてもらい、自分がなぜこの本を好きなのかを説明して、港頭公益図書館の公式アカウントに投稿した。港頭公益図書館は子どもたちの投稿の中から何人かを選んで、選ばれた者に好きな本を寄付した。このイベントは多くの子どもの興味を引きつけて、合計40名の子どもが好きな本を投稿した。港頭公益図書館は31名の子どもに好きな本をプレゼントした。子どもからの投稿から見ると、歴史に関わる書籍や自然、科学に関する書籍など、子どもが好きな本は幅広い。2.4.4 港頭公益図書館の課題港頭公益図書館は、2016年の発足から8年間を経過した。利用者数の増加により、ボランティアの不足が深刻な問題になっている。特に夏休みや冬休みには、地域の大学生も休みなので、持続的に港頭公益図書館のイベントを運営することが難しくなる。そのため、港頭公益図書館は2024年から夏期ボランティアを募集し始めた。夏期ボランティアに採用された場合は、港頭公益図書館が無料の住居を提供する。そのかわりに、ボランティアの役割は図書館の日常管理、イベントの企画と運営、子どもへの本の読み聞か
元のページ ../index.html#127