教育評論第39巻第1号
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119子どもの読書活動と「家読」の推進に関する一考察─日中の公共図書館の比較から─図4 「雪の子ストーリーハウス」親子の読み聞かせに使われた絵本の例出典:ハルビン市図書館WeChat公式アカウントより探求することができる。また、「砂盤ゲーム」では、協力して学ぶことを通じて、コミュニケーション能力やチームワークを育み、親向けのワークショップも開催されることで親子の交流が促進されている。さらに、「良書の紹介」や「雪の子ストーリーハウス」などの活動では、オンライン形式を取り入れ、より多くの利用者が参加できるよう工夫されている。また、「小さな図書館員」や「児童図書移動ステーション」といった地域密着型のサービスも、図書館とコミュニティの絆を深め、広く社会に読書文化を普及させる役割を果たすものである。2.3.3 「雪の子ストーリーハウス」「雪の子読書成長計画」では、様々なプログラムが実施されているが、その中で、とりわけ人気の高いプログラムとして「雪の子ストーリーハウス」がある。参加者の子どもたちは親と共に就学前の子どもに適した絵本を選定し、親からのサポートを受けながら、感情豊かに物語を語る技術を練習し、準備を進める。そして、読み聞かせの様子を録画して図書館のWeChat公式アカウントに公開している18。この過程において、まず親子の間で読書を楽しむことになる。またそれだけにとどまらず、親子が協力して他の子どもに絵本の物語を読み聞かせる活動を通じて、子どもたちの主体性が育まれ、さらに社会参加や貢献意識の醸成に寄与していると考えることができる。本章では、都市部における公共図書館における子どもの読書活動、及び家読のための推進活動の実態を紹介してきた。図書館は、このように多様な活動を通じて家庭内での親子読書活動を支援し、地域全体での教育支援の輪を広げている。日本と中国との絵本活動を比較した場合、どちらかというと中国での絵本の読書活動は、知識のインプットを重視する知識重視型であるように思われる。ただし、政府が政策的に公共図書館における子どもの読書活動を推進するために予算化し、多様なプログラムが展開されていること、またインターネットやWeChatを利活用したコンテンツの配信など、日本にとっても参考にすべき点は少なくない。以下では、農村地域における民間設立の図書館における子どもに対する読書活動支援の事例を

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