図2 WeChat公式アカウントによる絵本の紹介117子どもの読書活動と「家読」の推進に関する一考察─日中の公共図書館の比較から─例えば、2023年11月29日、『Building A Snowman』(作:Carolyn Kisloski、絵:Nina De Polonia)という絵本を紹介した14。絵本の各ページの内容はそのまま掲載されており、下部には中国語訳が添えられている。利用者は図書館から絵本を借りることなく、自宅で読み聞かせが可能となっている。日本では紙の絵本が主流であるが、中国ではデジタル絵本が普及しており、絵本の利用がより手軽になっていると考えられる(分担執筆:万静嫻)。2.3 中国における「親子読書体験基地」推進事業──ハルビン市図書館の取り組み2017年に全国婦女連合会・家庭および児童事業部(以下、事業部)は、国家新聞出版広電総局出版管理司と協力し、「親子読書体験基地」の推進事業を開始した。この取り組みは、各地の婦女連合会組織や新聞出版機関、関連する社会機関から積極的に支持を受け、2018年には全国で80ヶ所の「親子読書体験基地」が指定された。2020年には事業部が「全国家庭親子閲読体験基地管理弁法(試行)」を策定し、親子読書体験基地は地域における親子読書活動の中心的な拠点として機能し、家庭内での読書習慣の定着や科学的な家庭教育理念の普及が進められている15。ハルビン市図書館(以下、図書館)は、「親子読書体験基地」の1つとして、地域社会における教育支援の中心的な役割を果たしており、多彩な親子読書活動を展開しつつある(2024年8月28日、実地調査)。2.3.1 調査概要ハルビン市図書館は、1926年に設立され、民国時代、満州時代、新中国建国前などの重要な歴史的な時期を経て、貴重な歴史的資料を所蔵している。所蔵資料は、351万冊を超え、その中には10万冊以上の古籍や4万点以上の電子書籍も含まれ、年間150万人以上の読者が利用し、千回以上のイベントが開催されている。
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