116早稲田教育評論 第 39 巻第1号図1 活動当時の写真(連雲港市図書館HPより13)左:読書活動『孤独な小かに』、右:読書活動『しょうがないなぁ』各回の活動は、特定なテーマに沿った絵本の読み聞かせを中心に進行が行われるが、それに加えて工作やゲーム、科学実験など様々な活動も実施されている。例えば、11月18日には「経営」をテーマに設定し、日本の絵本作品である『からすのパンやさん』の読み聞かせを行った後、フリーマーケットが開催された。この活動では、子どもたちが物語の内容を実際に体験する中で、商品の値段設定や販売のプロセスを体得し、お金に対する理解を深めることができた。ここで興味深いのは、11回の読書活動の中で、図書館館員が直接に行ったのは、わずか2回であった点である。代わりに、師範高等専科学校(日本の短大に相当)の学生や小学校の教員が活動を担当するケースが多かった。学校と図書館の連携が緊密であることが窺えるが、その一方で、活動の内容は絵本の物語を純粋に楽しむことよりも、学校教育の延長として知識や能力を身につけることに重点が置かれている印象を受ける。また、中国における絵本の読み聞かせにおいては、実際の絵本を使用するよりは、デジタル黒板を活用することが一般的である。絵本の歴史が比較的に浅い中国では、日本のようなビッグブック絵本がほとんど存在しないこともある。このことからも、中国における絵本の読み聞かせが、デジタル技術の導入により独自の発展を遂げていることが窺える。2.2.2.2 遠隔:絵本のデジタル化・ICT化連雲港市図書館では、WeChat公式アカウントやtiktok公式アカウントなどのSNSを活用し、新書の紹介や図書館の活動情報を定期的に発信している。特に、WeChat公式アカウントでは、2022年度において336回、合計1,129篇の記事が掲載され、閲覧数は121.1万回に達した。WeChat公式アカウントでは、本の貸出、読書活動の紹介、さらにはデジタル書籍の閲覧が可能であり、利用者に幅広い読書サービスを提供している。子どもの読書活動に関する情報もWeChat公式アカウントを通じて発信され、参加申込みもこのプラットフォームから直接行うことができる。さらに、定期的に絵本の紹介があり、中国語の絵本のみならず、英語の絵本も多く取り扱われている点が特徴である。
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