111子どもの読書活動と「家読」の推進に関する一考察─日中の公共図書館の比較から─が定められた。この第1次基本計画は、「すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において、自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境の整備を推進すること」を基本理念とし、施策の計画的な実施を目指している2。現在は、2023年に閣議決定された第5次基本計画が運用されている3。この第5次基本計画では、第4次で目標とした不読率(1ヶ月に1冊も本を読まなかった児童・生徒の割合)が未達成であった点などについて述べられ、今後の基本方針として、不読率の低減、多様な子どもたちの読書機会の確保、デジタル社会に対応した読書環境の整備、子どもの視点に立った読書活動の推進の4点が大枠として掲げられた。基本計画における家庭での読書活動についての取り扱いに関してみていくと、第1次基本計画においては、第3章「子どもの読書活動の推進のための方策」の第一項目「家庭、地域、学校における子どもの読書活動の推進」のなかに記載がある。さらに小項目として、①読書活動における家庭の役割と取り組み、②家庭での読書活動を促進するための取り組み、といった2項目が立てられている。このうち、①読書活動における家庭の役割として、第1次基本計画では、「子どもの読書習慣は日常の生活を通して形成されるものであり、読書が生活の中に位置付けられ継続して行われるよう親が配慮していくことが肝要である」と記されている。②家庭での読書を促進するための取り組みは、第1次基本計画では、社会全体での包括的な支援や、読書の重要性の周知、保護者への家庭教育に関する講座の実施、読み聞かせ会の開催、家庭での読書についての情報提供などが挙げられている。第2次基本計画以降は、これにホームページを通じた情報提供が加わり、また第3次基本計画以降は、それまで図書館や地域の取り組みとして挙げられていた「ブックスタート」活動4が家庭での取り組み促進のための一方策として取り上げられるようになった5。第4次基本計画以降は、家族で同じ本を読むことで相互理解の深化を目指す「家読(うちどく)」の充実を図ることが推奨されている6。さらに、現行の第5次基本計画では、地域の多様な人材によって学習機会や情報の提供、相談対応を行う「家庭教育支援チーム」を全国的に配置し、家庭での読書活動の重要性を周知するとしている。家庭での読書活動の推進を家庭教育支援の一環として位置づけ、家庭教育の包括的支援と連携させるようになった点が、現行の第5次基本計画における取り組みの特徴である(分担執筆:谷口利律)。1.2 荒川区における読書環境の整備──「家読」を推進する公共施設1.2.1 「読書を愛するまち・あらかわ」宣言荒川区では、読書活動を推進するために、読書活動推進計画(2006年)、第2次読書活動推進計画(2011年)、第3次読書活動推進計画(2016年)、第4次読書活動推進計画(2021年)を出している。特に、第3次読書活動推進計画(2016年)に基づき、読書のまちづくりが施策の柱として打ち出され、「読書を愛するまち・あらかわ」宣言を出した(2018年)。宣言によれば、読書は「心の栄養」であり、「夢のタイムマシーン」であり、そして「魔法の磁石」である。そのため、荒川区では、絵本の読み聞かせをはじめとする子どもの読書活動を推進し、生涯にわたる読書活
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