はじめに現在、日本では公共図書館を中心として子どもの読書活動が盛んに展開されている。また、近年では家庭教育が重視されるにともない、家族のふれあい読書である「家読(うちどく)」が脚光を浴び、公共図書館でも、「家読」に積極的に推進するようになっている。しかしながら、共稼ぎに伴う保護者の多忙化、SNSの普及による読書離れ、あるいは家庭の経済的状況といった様々な要因から、「家読」の推進が課題を抱えているのも事実である。本報告においては、子どもの読書活動の推進の実態を紹介しながら、公共図書館が子どもの読書活動の推進において積極的に取り組んでいる東京都荒川区を事例としながら、家庭における子どもの読書活動の支援の実態を検討していきたい。また、近年、中国では都市部において公共図書館の普及が進み、全国的に読書活動の力を入れるようになってきたが、公共図書館が家庭での読書活動の支援をどのような形で進めているのかを検証する。さらに、現在、日本においてはグローバル化の進展に伴い、外国人の移住が期待されており、日本に居住する外国人も増加している。こうした在日外国人家庭の子どもに対する読書活動において、公共図書館がいかなる活動を展開しているのか、本稿において合わせて紹介していきたい。【研究報告】─日中の公共図書館の比較から─小林(新保) 敦子・坂内 夏子・谷口 利律孫 暁英・李 雪・万 静嫻劉 琦・趙 天歌・朱 奕雷李 俐穎・姚 穎109キーワード:子どもの読書活動、「家読」、図書館、絵本、読書支援、日中比較【要 旨】本報告においては、公共図書館における子どもの読書活動の実態、および公共図書館がどのように家庭における子どもの読書活動(家読)を支援しているのかについて、日本と中国を比較しながら検討することを課題として設定している。また、現在、在日外国人家庭が増加する中で、在日外国人家庭における読書活動において、公共図書館がいかに関与しているのかを考察した。具体的に日本の公共図書館の事例としては、読書活動の推進を施策として重点的に進めている東京都荒川区を取り上げた。また中国における都市部の事例としては、連雲港市、ハルビン市の市立図書館に焦点を当てて論じ、合わせて農村における民間立の公益図書館についても紹介した。さらに在日の国際家庭における多言語教育について公共図書館が重要な役割を果たしていることを調査に基づきながら指摘しつつ、新宿区大久保図書館の多文化サービスについて論じた。子どもの読書活動と「家読」の推進に関する一考察
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