金門・厦門・泉州の周辺は■成功一族の故郷であり、「境界をまたぐ」海上活動を活発に行う勢力が拠点とした地域であった。近代の金門の歴史的展開については「はじめに」で述べたとおりであるが、国共内戦と冷戦の〈最前線〉であった金門では、1980年代以降に大陸での改革開放と中華民国の民主化が進展したことを背景として、2001年に厦門−金門間に航路が開設され、「小三通77」が開始された。コロナ禍で一時閉ざされたものの、2023年には再開した(【写真6】【写真7】)。国共内戦の激戦地であった金門は、「小三通」によって大陸からの観光客や、厦門から金門経由で台北へと向かうビジネス客78によって賑わい、島内に多くのこる戦跡は観光地となっていった79。また、2018年には海底送水管が完成し、金門は厦門に水も依存するようになった80。金門は、歴史的につながりの深い福建省との関係をさらに強めていくのか、それとも今後も台湾や馬祖との「偶然の共同体」に留まり続けるのか、岐路に立たされているが、インタビューをしていると、軍事的衝突が起こることをほとんど想定していない島民が多いことが印象的であった。【写真6】「小三通」の復活を祝う看板(金門水頭港)81【写真7】人民元から台湾ドルへの両替所(金門水頭港)8269⑥金門
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