宮古島駐屯地、そして2023年に石垣駐屯地が開設された。自衛隊の配備をめぐっては、八重山でも大きな議論を呼んでいるが、その反応は沖縄とは異なり、賛成派と反対派が拮抗する状況となっている。観光については、コロナ禍以前、石垣島へはクルーズ船が寄港していたが、もともと日本人観光客が非常に多い土地柄ということもあり、大きな問題になることはなかったという69。現在、与那国町が台湾の花蓮との間に航路を設けるべく調査・調整を進めている。このように八重山では、島を越えた人の移動によって地域社会が形成されてきた。そして台湾との歴史的なつながりを軸に、沖縄とは異なる政治意識が生じている。一方で、現在では台湾との間の日常的な交流が盛んであるわけではない70。朝鮮半島西海岸の北緯37.5度に位置する白翎島は、古代には鵠島と呼ばれ、島民たちが活発な海上活動を行っていた71。この島は朝鮮半島と山東半島との間の最短ルート上にあり、かつこの海域は地形の関係で荒れやすいことから、半島の南北通交や中国との通交において重要で72、島にのこる沈清という孝女についての伝承の中にも、島に来航した中国商人が登場する。現在、この島の人口は4,000人程であるが、同程度の規模の兵士が配備されているといわれている。これは、韓国と北朝鮮との軍事境界線が半島西部では38度線よりも南に食い込んでいることから、白翎島の15km先の対岸にあたる半島の「本土」は北朝鮮領となっているためである(【写真3】)。それ故、海岸線に沿って有刺鉄線が張り巡らされ、地雷原が設けられており、夜間は海に近づくことが禁じられる軍事的緊張の〈最前線〉となっている。海岸線には、脱北者へ向けたメッセージと、連絡用の通信機器が所々に設置されている(【写真4】)。【写真3】白翎島から対岸の北朝鮮をのぞむ7367⑤白翎島
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