教育評論第38巻第1号
67/208

2  この法律において「特定有人国境離島地域」とは、有人国境離島地域のうち、継続的な居住が可能となる環境の整備を図ることがその地域社会を維持する上で特に必要と認められるものとして別表に掲げるものをいう。以上をまとめると、日本における離島政策は、当初は「隔絶性」や「後進性」を是正するためのインフラ整備が中心であった。その後、徐々に島嶼の国家的な役割が認識されはじめ、経済水域の問題からさらに離島の価値に対する認識が高まり、離島市町村の裁量権を拡大することで自立的発展が目指される段階へと移行していった。そして領土問題などを機に国の責任が明確に打ち出されるようになり、また離島の無人化を防ぐため、活性化交付金の創設など具体的な支援施策の拡充が図られた。さらに、「国境離島」に対する関心の高まりから有人国境離島法が制定されるに至り、有人国境離島に特化した離島政策が行われるようになった。現在では、関係人口の創出などより一層の具体的な施策の展開が目指されている。本章では、「国境離島」とされる地域が具体的にどこであるかを踏まえて、現代日本における法的概念としての「国境離島」の限界と問題点について検討していく。有人国境離島法では、有人国境離島と有人国境離島地域について次のように定義されている。第二条 この法律において「有人国境離島地域」とは、次に掲げる地域をいう。 一  自然的経済的社会的観点から一体をなすと認められる二以上の離島で構成される地域(当該離島のうちに領海及び接続水域に関する法律(昭和五十二年法律第三十号)第一条第一項の海域の限界を画する基礎となる基線(同法第二条第一項に規定する基線をいい、同項の直線基線の基点を含む。次号において「領海基線」という。)を有する離島があるものに限る。)内の現に日本国民が居住する離島で構成される地域 二  前号に定めるもののほか、領海基線を有する離島であって現に日本国民が居住するものの地域具体的にそれぞれに該当する島嶼であるが、特定有人国境離島地域は有人国境離島法の別表において特定されており、8都道県にまたがる15地域・71島である。一方、有人国境離島地域は有人国境離島法の中では特定されておらず、有人国境離島法の第四条に基づいて内閣総理大臣が定める「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する基本的な方針38」の中で別表として掲げられている13都道県にまたがる29地域・148島である。これらをまとめると、以下の【地図】のようになる。特定有人国境離島地域は有人国境離島法で定められているものの、有人国境離島地域は内閣総理大臣が定める同法の「基本方針」によってしか特定されないという若干の倒錯はあるものの、特定有人国境離島地域は有人国境離島地域のうち特に重要な島嶼について指定されていると考えられる。有人国境離島地域は領海基線を基準に定められるものであるため、外国や外国人との直612.現代日本の法的概念としての「国境離島」

元のページ  ../index.html#67

このブックを見る