2 国は、前項の基本理念にのつとり、離島の振興のため必要な施策を総合的かつ積極的に第 一条の二 離島の振興のための施策は、離島が我が国の領域、排他的経済水域等の保全、海洋資源の利用、多様な文化の継承、自然環境の保全、自然との触れ合いの場及び機会の提供、食料の安定的な供給等我が国及び国民の利益の保護及び増進に重要な役割を担つていることに鑑み、その役割が十分に発揮されるよう、厳しい自然的社会的条件を改善し、地域間の交流の促進、居住する者のない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止並びに離島における定住の促進が図られることを旨として講ぜられなければならない。 の増進」に寄与することが掲げられた。「後進的」な離島を中央からの支援で整備するのではなく、離島の自立的発展を促すことで「国民の利益」、すなわち国家領域や経済水域の保全などに資することが目的とされたのである。2013年の延長・改正では、次のような第一条の二が新設された。策定し、及び実施する責務を有する。これは、「離島は、その存在によって四四七万平方キロメートルもの排他的経済水域を保全するなど我が国の領域、排他的経済水域等の保全等に重要な役割を担っているが、無人化も懸念される中、無人離島の増加と離島における人口の著しい減少の防止が極めて重要であり、そのため、離島における定住の促進を図る18ことが不可欠である19」という現状を踏まえ、「国としても離島振興に責任をもって関わっていくことが必要との認識から、基本理念と国の責務規定が新たに設けられた20」ものである。法律制定時の政権与党である民主党の離島政策プロジェクトチーム事務局長であった打越あかしは、「現行法21では、振興計画の最終的な実施責任者は計画を策定する都道府県だと受け取られがちでしたが、改正法では最終的な国の責任を明確にし、これまで以上に強い支援を求める内容となっています22」と解説する。このような形で離島振興法が改正された背景には、2010年9月の尖閣諸島沖での漁船衝突事故や2012年9月の尖閣諸島国有化、2010年11月のメドベージェフ大統領による北方領土上陸、2012年8月の李明博大統領による竹島(韓国名:独島)上陸など、離島振興法の延長・改正の議論が行われている時期23に領土問題が先鋭化し、国家領域・経済水域の保全や防衛における離島の重要性が認識されていたからである。そのため、国の責任を明確にする形での改正が図られたといえるだろう24。これまでの改正を通して、離島の国家的な役割が認識されていくとともに、離島に対する中央政府の関わりと責任が強化されていった。しかし、離島振興法の対象には「国境」に接していない内海の離島も含まれ、その意味では法的に離島として扱われる地域のすべてが国家領域・経済水域の保全や防衛に関わる役割を担っているわけではない。このため、そうした役割を有する「特に重要な離島」に対するさらなる特別措置の必要性が議論されるようになっていた。その結果、2013年の離島振興法では、附則第六条で「特に重要な役割を担う離島の保全及び振興に関す59
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