指導上の留意点る。なお、具体的な指導内容については表4にまとめた。1点目は、教師が学習を設計する作業型フィールドワークにおいては綿密な準備が必要となる点である。限られた時間の中で目標とするスキルを学ぶため、パフォーマンス課題の設定や資料の準備、問いの想定など細部まで設計しておくことが求められる。このように書くと準備のハードルが高いようにも見えるが、教師側もフィールドワークを繰り返す中で要領よく準備ができるようになるため、想像するほど大きな負担とはならない。ただ、協力者の存在は重要であり、他教科の教師との連携や、他校の地理教師との教材の共有などの工夫が助けになるだろう。2点目は、生徒が作業を行う際にもある程度のガイダンスは必要になるという点である。作業生徒の活動内容地形図やGISソフトなどによって、判読・分析する地図資料(主題図)を用意する。読図と分析下見をして、教師は観察対象をある程度把握しておく。自然地理的な観察調査においては、必要に応じてメジャーやスケール、温度・湿度計やルーペなど調査器具も準備する。後々振り返れるように、状況に応じてカメラも準備させる。アンケート調査の目的を考え、必要に応じて用紙やアンケートボードなどを準備する。簡潔な選択式アンケートの場合にはシールを貼ってもらうのも回答者にとってハードルが低く便利である。インタビュー調査の目的を考え、必要に応じて用紙やフィールドノートを準備する。調査項目を事前に教師側で準備することもあれば、探究型に近い形で行う場合には生徒に考えさせてもよい。目的に応じた地形図やGISソフト、土地利用を記録するタリーシートなどを用意する。観察調査アンケート調査インタビュー調査作図と分析指導方法どこにあるのか(分布)、どうしてあるのか(要因)、他にもあるのか(比較)、いつからあるのか(変化)など、具体的な問いかけをしてもよい。五感を用いながら何がどこにあるかを観察した上で「どうしてあるのか(分析)」を考察する。見学型フィールドワークの要素を取り入れて学級全体で行うことも可能であるし、グループ・個人でも可能である。アンケート・インタビュー調査の目的としては、現状把握型と仮説検証型に大別できるだろう。いずれかのタイプを選択した上で、調査に必要な項目や調査対象を検討する。とくに仮説検証型の調査の場合には、事前に立てた仮説にとらわれすぎず、先入観を捨てて好奇心を持って向き合うことが重要である。事前学習とフィールドワークでの成果を合わせて、地理的事象の分布や要因、他地域との比較や地域の変容について分析する。「読図と分析」で挙げたような具体的な問いを投げかけてもよい。45目的や習熟度に応じて、問いの具体性や用意する資料の種類や難易度を調整する。地域の地理的事象について先入観を持たずに観察し、経験と認知の両方から学ぶことを心がけさせる。教師の視点や考えを一方的に押し付けてしまうと、五感を伴うフィールドワークの意義が半減してしまう。調査の初めに自分の身分を名乗る、目的を伝えるといった基本的なスキルに関するレクチャーも必要である。プライバシーに関する内容を聞く場合には十分注意する。教えていただくという謙虚な姿勢を心がけさせ、常に「相手がこのようなインタビューを受けたらどう思うか?」を意識しながら実施させる。終了後には気持ちよくお礼の挨拶をすることも欠かさない。目的や習熟度に応じて、問いの内容の具体性や凡例の有無を検討する。表4 フィールドワークの活動と指導との関係事前準備
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