教育評論第38巻第1号
48/208

日参加者数高校生18名(うち静岡県内からの参加者9名)、教員9名(うちスタッフ4名)、大学院生1名10:40修善寺駅集合→11:00会場(ITJ BASE Shuzenji)にてグループ分け→午前のフィールドワーク(修善寺温泉の街歩き)→12:00会場に帰着/昼食(各自持参)→12:30午後の作業の説明→13:00午後のフィールドワーク(グループごと/1時間ほど)→14:00まとめ・発表→15:30終了との大切さ」「地理学習のモチベーションの向上」などフィールドワーク実施の意義については十分に理解できたとの声が聞かれた。その一方、「教材研究が難しい」「準備時間の確保が難しい」との意見も多く聞かれた。学校現場におけるフィールドワークの普及のためには、実際に教師がフィールドワークを経験し、その経験をもとに教師が自らのフィールドワークの内容・コースを設定し、実施することが必要となる。このため、経験の浅い教師を対象としたフィールドワークを定期的に実施し、生徒の安全確保に関する知識やスキルの共有、参加者の主体性を引き出す工夫、情報の取捨選択の重要性等についての理解を図って行くことが必要であろう。作業型フィールドワークとは、案内者のガイドや誘導はありつつも、教室では難しい景観観察や地図読図・作図、インタビュー調査、アンケート調査などの地理的な作業に生徒が取り組むフィールドワークである(山本,2022,p.15)。生徒中心で作業に取り組んだり議論を行ったりするものの、目的としてはスキルの獲得が中心に据えられるため、目的・テーマ・視点は基本的には教師の側で準備するのが一般的である。ただし、実際にはその過程で地理的知識の収集や探究的なアプローチを組み込むことが多い。以下では、「修善寺リ・ブランド−温泉観光地の歴史と未来−」と題して実施した静岡県伊豆市修善寺温泉での作業型フィールドワークの事例を踏まえて、必要とされる指導の内容について論じる。なお、本フィールドワークの概要は表3の通りである。まず修善寺駅に集合した後に修善寺温泉にバスで移動し、筆者の1人の山本の案内のもとで修善寺温泉街のエクスカーションを行った。エクスカーションでは聖と俗の境界といわれる桂川を観察し、807年に弘法大師が開いたとされる独鈷の湯を見学した。河床の温泉は、谷底の地下水、凝灰岩・デイサイトの割れ目に帯水する地質、そして達磨山の地熱による恵みであることを確認した。次に温泉街の中心部に位置する修禅寺を訪れた。修禅寺の境内の背後にはヤブコウジ-スダジイ群集の照葉樹林が広がる一方、対岸には二次林が広がっていることを観察した。修禅寺から桂川の上流側に進むと、温泉の共通管理の貯湯槽を見ることができる。一時は枯渇の危機に瀕していたが、修善寺温泉事業協同組合により旅館などへの配湯にかかわる集中管理システムが構築されたことにより、安定的かつ効率的な温泉の利用が実現されている。桂川を下流側に戻りなが42時2022年8月9日当日の行程表2. 作業型フィールドワークでの指導1)フィールドワークの概要表3 修善寺フィールドワークの概要

元のページ  ../index.html#48

このブックを見る