上記の実践および、フィールドワーク終了後に経験年数の少ない教師3名、教職希望の院生・学生4名(計7名)を対象として実施した座談会で出された意見・感想を踏まえると、見学型フィールドワークにおいて必要な指導としては、以下の3点が挙げられる。1点目は、生徒の安全確保に関する知識やスキルの共有が重要である。本フィールドワークの実施日は真夏日であり、熱中症のリスクを下げるために、説明はできる限り日陰で行うようにした。その影響もあり、座談会ではフィールドワークのデメリットとして「フィールドワークの学びが気象条件に左右されること」が指摘された。安全にフィールドワークを実施するためには、交通安全指導(自動車・通行者への注意)、生徒の怪我や体調不良者への対応(熱中症対策を含む)、天候不良時(雨天・荒天)の対応など多岐にわたる配慮が必要とされる。このような安全確保に関する知識やスキルを蓄積し、経験の浅い教師にも共有することが重要であろう6)。また、教師と生徒たちとの距離によって話の聞取りやすさに差が見られたとの指摘もあり、こうした参加者への細やかな配慮についても情報の共有が望ましい。2点目は、参加者の主体性を引き出すための工夫が必要である。見学型では、ガイドから参加者への一方的な説明に終始してしまう懸念がある。座談会においても、問いづくりの重要性が指摘されており、参加者への適切な問いにより学習効果がより高められると考える7)。また、本フィールドワークでも実践したように、見学型であったとしても簡単な作業を組み入れることで、より能動的なフィールドワークを実現できる。3点目は、情報の取捨選択が必要である。本フィールドワークにおいては、表2のように幅広くテーマを設けた。座談会においては、自然・人文地理のいずれの内容もカバーされており、様々な興味をもつ参加者のニーズを満たしているとの意見が聞かれた。その一方で、ガイドが事前にどこまで情報収集するのか、また収集した情報をどこまで参加者に伝達するのか、といった点についての難しさも指摘された。フィールドワークの実施時間を考慮した上で、参加者の発達段階に応じて内容を取捨選択する必要がある。座談会では、フィールドワークのメリットとして「実物を自分の目で見ること、地図を見るこ具体的なフィールドワークの内容商店街の分布の調査、ルートマップの読図配布資料の分布図(印刷業の分布図等)の読図武蔵野台地と神田川流域の低地の対比地域的な特徴としての早稲田大学の学生街神田川による人間と自然環境との結びつき(染色業と河川の関わり、水害とその対策の歴史)印刷業と都心に立地する出版社との関係性商店街の新旧住宅地図の比較による地域変容の理解412)必要とされる指導表2 地理的な見方・考え方とフィールドワークの内容との関係地理的な見方・考え方位置と分布場所人間と自然環境との相互依存関係空間的相互依存作用地域
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