をもとに提言した研究としては篠原(2001)がある。これらの先行研究では、主にエクスカーション(巡検)を実施し、それを踏まえて土地利用図を作成させたり、エクスカーションのプランを立案させたりする研究が多かった。授業の中での実施という制約上、やはり主な対象とされてきたのは見学型エクスカーションであり、作業型・探究型フィールドワークも視野に入れた指導力の育成については課題として残されている。そこで以下では、実際に高校生を対象に行った見学型・作業型・探究型の3つのタイプのフィールドワーク実践を踏まえて、フィールドワークで必要とされる指導内容について検討する。見学型フィールドワークとは、教師や専門家のガイドに付いて行き、話を聞くことに主眼が置かれるフィールドワークである(山本,2022,p.15)。以下では、「早稲田を歩く−大学周辺のまち歩きで新発見!−」と題して実施された早稲田大学周辺での見学型フィールドワークの事例を踏まえ、見学型フィールドワークで必要とされる教師による指導のあり方について論じる。なお、このフィールドワークの概要は表1の通りである。このコースは、2019年度以降、早稲田大学地理学教室主催「高校生のためのフィールドワーク入門講座」において実施してきたコース(吉田,2022,pp.65-74)がベースとなっているが、参加者のより主体的な参加を促すため、今回は商店街の観察作業を追加した。現在の商店街周辺の住宅地図を配付したうえで、どのような種類の店舗が多いのかをメモするよう指示し、商店街を自由に観察する時間を10分程度設けた。その後、教室での振り返りにおいて、過去(1997年)の住宅地図を配付し、過去と現在を比較して気づいたことをグループごとに発表させた。また、このフィールドワークでは、「地理教育国際憲章」(国際地理学連合・地理教育委員会編,1993年)において示された地理的な見方・考え方に基づいて内容・コースが策定された(表2)。40日 時2022年7月23日参加者数高校生21名、引率教員7名(うちスタッフ4名)、大学院生・学部生4名13:30早稲田大学大隈講堂前集合 筆者の1人の池の案内によるFW(大隈重信像、演劇博物館、高田馬場跡、甘泉園、神田川)→大隈通り商店街の観察作業→14:45 FW終了→15:00 教室での振り返り(商店街を観察して気づいたことの発表)→15:30 終了当日の行程表Ⅲ フィールドワークにおける指導内容1.見学型フィールドワークでの指導1)フィールドワークの概要表1 早稲田フィールドワークの概要
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