─ 批判的思考理論と教師の熟達化に着目して ─が分かった。確かに概念型学習モデルは、現行学習指導要領との比較においても、問いの取り扱いに関して落差が大きい。落差の大きさはすなわち概念型学習モデルの独自性であるため、それが教師たちが実践に適用する際の■藤に結びついていることが確認された。セッション2では、教師らが作成した単元の指導計画を足がかりに、概念型学習モデルを適用した授業の具体的な手立てを明らかにした。セッション2の語りから確認できることをまとめれば次の通りとなる。第一に、核となる概念と取り扱う題材(テーマ)は密接に連動していた点である。第二に、概念型学習モデルの3種類の問いのうち「議論を喚起する問い」は、教師が型を示す指導方略を採用し、生徒が英語で発話するよう工夫していた点である。第三に、Language Bで取り扱う概念は1単元で1つの概念に絞られるわけではない点である。セッション3では、教師らの授業デモンストレーションを主としながら、指導方法や指導方略を明らかにした。セッション3の語りから確認できることをまとめれば次の通りとなる。第一に、Language Bでは核となる概念と言語特有の役割についての概念が同時並行的に扱われていた点である。第二に、3種類の問いは必ずしも疑問形を取るのではなく、生徒の英語熟達度の実態に合わせて変化を加えていた点である。第三に、3種類の問いを核としながら、生徒同士が対話する仕掛けづくりがなされ、常に何かを考えざるを得ない状況を意図的に作りだしていた点である。教師らの語りから見えてきた実践への適用に向けた熟達化のプロセスをまとめれば、次の2点に集約される。第一に概念理解を深めるために問いへの応答を求める際、母語使用が誘発されがちなので、英文の型を示すことで英語での対話を促す指導方略を採用していた点である。主な背景は、問いの取り扱いが現行学習指導要領の理念とは大きく異なる、といった概念型学習モデルとの落差であった。本来であれば転移可能性が高いマクロな概念と教科固有の知識とされるミクロな概念の両方を取り扱うことが概念型学習モデルの基盤となる哲学であるものの、実践への適用場面ではミクロな概念よりも、マクロな概念を取り扱うことが好まれる傾向が確認された。一方、マクロな概念を取り扱うことで、授業で使用する英語の語彙・表現の抽象度が高まり、その結果として、生徒らの言語学習への負荷がかかり、母語(日本語)使用が誘発されていた点が課題となった。そこで、教師らは英文の型を示すことで英語での対話が実現できるような支援を行う指導方略を採用する、というプロセスを踏んでいた。第二に、Language Bにおける概念型学習モデルの核となる4つの概念と言語特有の機能への理解を深めるための5つの概念を密接に関連させながら、題材(テーマ)を通して概念を同時並行的に取り扱う授業展開が試みされていたことである。言語特有の機能への理解を深めるための概念を取り扱うことにより、無意識的に言語学習の本来の目的である英語熟達度の向上を図っていた。そして、指導方略として、概念型学習モデルで重視されているはずであるHattie et al. (2020)が示した3つの知識の型(「着想・考え」「スキーマ」「メンタルモデル」)が、実践の場ではそれ以外の領域にも焦点が当てられた指導方略が採用されていたのである。教師らの語りからは、マクロな概念を取り扱いながら、語の定義をさせたり、自分の意見・考えを表現するために教師がエリクソンによる概念型学習モデルの英語授業での適用175.2.概念型学習モデルの実践への適用についてのまとめ
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