教育評論第38巻第1号
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─ 批判的思考理論と教師の熟達化に着目して ─C教諭は本時の展開の流れを提示しながら「まず必ずガイディングクエスチョンズっていうのたいなことをグループでやらせてることが多い」と説明した。B教諭が語る「ユニットのリサーチクエスチョン」とは、単元の核をなす問いを指し、概念型学習モデルの3種類の問いと同義である。そして「command term」とは、生徒の思考を深めるための指示を指す。「compare and contrast」とは、共通点や差異を見出す学習活動を指す。B教諭にとって、授業の導入は3種類の問いへの応答が鍵であり、Language Bで取り扱う概念「variation(違い)」を意識していることが確認できる。A教諭・C教諭も同様に、授業の導入部分で3種類の問いへの応答を求めていることを語り、授業の導入段階で3種類の問いが取り扱われていることが確認された。一方、3種類の問いへの応答を行う学習活動には課題もあることを説明したのがB教諭である。B教諭は「できる子が日本語で説明してあげないと下のほうの子はよく分かってないみたいなことがままあったり」、「レベルの差があるっていうのと、日本語をどうしても雰囲気上使いがちになってしまうとこをどうするかっていうのと、あとは文法、語彙、語法。このあたりをうまいこと活動に交えながらやるにはどうしたらいいのか」と語る。問いへの応答にあたっては、生徒の英語熟達度の問題から、母語である日本語が使用される状況が起きていることが指摘された。加えて、文法や語彙、語法といった言語の機能に焦点を当てた学習活動と両立させることに試行錯誤している現状が指摘された。3人の教師らの語りから確認できることをまとめれば、次の通りとなる。第一に、概念型学習モデルを踏まえた英語授業では、授業の導入部で3種類の問いへの応答を求めている点である。第二に、問いへの応答の場面で生徒たちは、正確な英文が言えない・書けないことにより、結果として日本語使用が促されてしまう点について指導上の■藤を抱えている点である。では、教師たちはこうした概念型学習モデルがめざす理念と実践との落差に対して、どのような工夫を行い、実践の場で適用させようとしているのだろうか。セッション2では、教師らが、概念型学習モデルと実践の落差に対して、指導を行う際にどのような手立てを行っているのかを明らかにすることを目的とした。手立てとは、生徒の実態や取り扱う題材(テーマ)の内容を踏まえながら、概念型学習モデルの実現のために行っている指導方略を指す。セッション2の目的の実現のため、教師らに概念型学習モデルを踏まえた授業の単元の指導計画を事前に作成するよう依頼した。その後、作成した指導計画を互いに持ち寄ったうえで、単元のねらいや授業の流れを説明してもらい、概念型学習モデル実現のための指導方略を語ってもらった。作成依頼の結果、B、C教諭が指導計画を持参したので、両教諭の指導計画を基に3人の教師らで議論してもらう形式をとった。まずC教諭は単元を通底する概念を「creativity(創造性)」とし、題材(テーマ)として「Human Ingenuity(人間の独創性)」を設定した指導計画を提示した。この題材(テーマ)は、Language Bで取り扱う必須テーマである。単元は計14単位時間で構成され、単元の到達目標は英語でレビューを書くことに加え、creativity(創造性)という概念について、芸術について書かれた英文を素材として授業を展開させていくことが説明された。エリクソンによる概念型学習モデルの英語授業での適用134.2.2.セッション2(概念型学習モデルと実践の落差への手立て)

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