伝統と文化や古典に関連する近代以降の文章を取り上げること」に関しても、我が国の伝統と文化や古典に関連する近代以降の文章とは、我が国の伝統と文化に関連する近代以降の文章、古典に関連する近代以降の文章のことである。前者には、例えば、我が国の伝統や文化について書かれた解説や評価、随筆などが、後者には、例えば、古典を翻案したり素材にしたりした小説や物語、詩歌などが考えられる。〔1〕姿を消した唐の張継「楓橋夜泊」詩176筆、戯曲、説明、論説、評論、記録、報告、報道、手紙など、多種多様なものがあることに留意する必要がある。と説明を加える。その上で、これらに「日本漢文、近代以降の文語文や漢詩文などを含めること」が今次の改訂の大きな特徴となることは言うまでもない。その「日本漢文」について「上代以降、近世に至るまでの間に日本人がつくった漢詩と漢文とをいう。」と規定するとともに、これは本来、古典としての漢文に含まれるものである。我が国の文化において漢文が大きな役割を果たしてきたことや、日本人の思想や感情などが漢語、漢文を通して表現される場合も少なくなかったことなどを考え併せると、日本漢文の適切な活用を図る必要があり、ここで改めて示している。と、その教材としての意味合いを説く。あわせて「近代以降の文語文や漢詩文」についても、時代的な範囲では古典に含まれないが、近代以降にあっても、古典の表現の特色を継承した優れた作品や文章などがあり、科目の性格を踏まえた上で、ここで改めて示している。と説明する。科目新設の趣旨に直結する「我が国の言語文化への理解を深める学習に資するよう、我が国のと科目の性格を踏まえた枠組みが説明される。その際「必要に応じて、伝承や伝統芸能などに関する音声や画像の資料を用いることができること」は、その実体を知らずには十全な理解がなし得ないことへの前向きな配慮といえる。その意味で、指導のねらい、生徒の興味・関心、指導の段階や時期などに配慮し、親しみやすく効果的なものを用いることが大切である。なお、画像の資料を用いる際には、言語の教育を目指す国語科の性格を踏まえ、画像と言葉とを結び付けた指導となるよう留意する必要がある。の文言は丁寧な解説といえる。研究部会「新高等学校国語科目「言語文化」(共通必履修)の教材研究」(2021年度〜2022年度採択)は、この「言語文化」の教材を対象として現職の人々の協力も得て多角的に研究活動を展開した。その活動の内容は『早稲田大学教育総合研究所所報』に報告(注1)したとおりであり、以下には個人的にその「教材」に対して思考したことを書いてみたい。「言語文化」の漢文教材を一覧する中で、一抹の寂しさを覚えるのは、唐・張継の「楓橋夜泊」詩が採用されていないことである。改訂前の『高等学校学習指導要領』下の共通必履修科目「国語総合」では、桐原書店・数研出版の教科書に採択され、選択科目の「古典B」においては、三省堂書店・教育出版・東京書籍・筑摩書房の四社が採択していた。今次改訂では、選択科目である「古典探究」においては、文英堂・筑摩書房に採用されているが、全員履修の共通必履修科目
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