教育評論第38巻第1号
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キーワード:言語文化、漢文教材、日本漢文、伝統と文化、楓橋夜泊、菅原道真、中野逍遥【要 旨】2018年告示の「高等学校学習指導要領」によって共通必履修科目として再編された高等学校国語科目「言語文化」(2022年度スタート)は、我が国の言語文化への理解を深め、その担い手の自覚を涵養することを主眼にして全生徒履修の科目として新設された。その教材に着眼して「学習指導要領」「学習指導要領解説」を確認しながら、「古典としての古文と漢文」に含めることとなった「日本漢文、近代以降の文語文や漢詩文など」を視野に入れて、研究部会を推進してきた。ここでは「言語文化」の教材に関する個人的な考察を、1.姿を消した唐の張継「楓橋夜泊」詩、2.菅原道真「謫居春雪」詩、3.中野逍遙「道情七首」第一首の3項目に分けて行う。1.では「楓橋夜泊」詩がもつ文化史的な意味を近代作家の記述や外交官の詩篇、日本に建立された寒山寺などの観点から考説する。2.では、道真の「謫居春雪」詩における「梅花」と「春雪」、「雁足」と「烏頭」といった詩語の考察から、道真の思いやその表現上の典拠等について考える。3.では、正岡子規や夏目漱石に同じく慶応三年に生まれ東京大学予備門で同級でもありながら、二十七歳で早世した中野逍遙の「道情七首」第一首を中心に情愛の表出などを考察する。2018年告示の「高等学校学習指導要領」によって「現代の国語」「言語文化」(各2単位)の共通必履修科目と「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」(各4単位)の選択科目に再編された高等学校国語科目(2022年度より年次進行実施)の中で、「言語文化」は、我が国の言語文化への理解を深め、その担い手の自覚を涵養することを主眼にして全生徒履修の科目として新設された。その第2章第1節「国語」第2款「各教科」第2「言語文化」の3「内容の取扱い」(4)に示される「教材」についての留意事項「ア」に次のようにある。ア 内容の〔思考力、判断力、表現力等〕の「B読むこと」の教材は、古典及び近代以降の文章とし、日本漢文、近代以降の文語文や漢詩文などを含めるとともに、我が国の言語文化への理解を深める学習に資するよう、我が国の伝統と文化や古典に関連する近代以降の文章を取り上げること。また、必要に応じて、伝承や伝統芸能などに関する音声や画像の資料を用いることができること。この〔思考力、判断力、表現力等〕の「B読むこと」の教材に関して、『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説』(平成30年7月)には、「古典及び近代以降の文章」の「古典」が「古典としての古文と漢文」を指すことを明記し、その際、古典としての古文には、和歌、俳諧、物語、随筆、日記、説話、浮世草子、能、狂言など、漢文には、思想、史伝、詩文など、そして、近代以降の文章には、詩歌、小説、随175【研究報告】「言語文化」教科書の漢文教材をめぐって堀   誠

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