822にあり、IBDPでの指導経験はほぼ同等であるとされるレベルにある。そこで、3名の教師を対象とすることは妥当であると判断した。各セッションで明らかにする内容は次の3点である。第一に、概念型学習モデルを適用させた英語授業では、どのような学習活動が展開されているのかである(セッション1)。第二に、概念型学習モデルを適用した授業での学習活動について、どのような手立てを行っているのかである(セッション2)。第三に、概念型学習モデルを適用した授業生徒への指示の仕方や指導上の工夫がどのように行われているのかである(セッション3)。なお、調査対象者は概念型学習モデルの実践経験年数が比較的短い教師である。経験が浅いということは、概念型学習モデルを踏まえた授業に対する実践知の獲得に向かっている過程にあることを意味し、こうした過程を楠見(2021)では「熟達化」と名付けている。楠見(2021)によれば実践知とは「熟達者がもつ実践に関する知性」(p.4)であり、実践の中に埋め込まれた暗黙知を適用する能力を支えるものであると説明する。Ericsson and Lehmann(1996)によれば熟達者とは通常10年以上にわたる経験が必要であると主張しており、Ericsson and Lehmann(1996)の主張に基づければ調査対象者は全員が10年未満のため熟達者には該当しない。すなわち、本研究の対象者は熟達化の渦中にある教師であり、概念型学習モデルをどのように解釈し、再構築し、実践の場で適用させようとしているのか、といった一連の過程を確認する。各セッションにおける語りは次の通りである(太字・斜体は筆者による。なお( )内は筆者による補足)。概念型学習モデルを踏まえた授業実施にあたっては、「Language B」のSubject Guideや概念型学習モデルで扱われる専門用語を用いて語られるため、用語の意味するところは適宜筆者が補う。セッション1は、概念型学習モデルに基づく英語授業について、どのような学習が行われているのかを明らかにすることを目的とした。そこで、調査対象者に授業での生徒たちの学習の様子を語ってもらった。まずB教諭は、「ユニットのリサーチクエスチョンに対する自分のまず最初のアイデアを書きなさい」と英語で指示し、「command termで言ったらcompare and contrastとかにあたると思うんですけど。その辺りのことを英語で、このリサーチクエスチョンついて話してみてくださいみ12所属先・方面名前A教諭国・公立高校・近畿地方言語B(英語)、TOKB教諭国・公立高校・関東地方非IBDPの英語科目C教諭私立高校・中国地方教員経験年数IBDP校での経験年数22 2 2(筆者作成)4.2.各セッションにおける語り4.2.1.セッション1(学習実態の解明)表7.調査対象者の属性主な担当科目言語B(英語)
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