教育評論第38巻第1号
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170表5 千葉県浪花中学校におけるHRと道徳の時間で実施する指導ホームルームの時間で行う指導・健康指導(わたしの健康法・身体検査等)/・学業指導(勉強の仕方など)/・進路指導(進路の適正など)/・余暇利用(夏休みの計画など)/・レクリエーション/・行事への参加・相談/・自治活動(組織)/・伝達・社会性指導(創造性、大衆性、前進性)/・道徳性指導(人間尊重、合理的精神)/・人格性指導(豊かな心情)/・その他ホームルーム指導における人間関係の問題道徳の時間で行う指導そして、同書においては、特別教育活動と道徳教育との関係が述べられており、そこでは「生徒は休憩時間や放課後に運動の練習をしたり、試合をしたり、教師の家庭を訪問したり、演劇を見に行ったり、友達と交際したり、種々様々の活動をしている。そうした学校生活の本当に楽しい思い出は正課の授業よりもむしろ課外の活動にある場合が多い」23として、課外での活動が多いことから「生徒の生活を尊重し、生徒の人間性を尊重するところから教科外の生活、つまり、特別教育活動を教育計画の中に取り入れることになった」24と述べており、生徒の生活を重要視することで、正課だけでなく、特別教育活動の方面から生徒の品性の陶冶を目指す教育に貢献することができると述べている。そして、実際に千葉県の新制中学校では特別教育活動と道徳教育が関連付けられて実施されている事例も確認できる。1958年における千葉県浪花中学校の指導計画を分析すると、そこではホームルームと道徳の時間が関係付けられた指導計画が示されている。同校では、従来行っていたホームルームでの指導を、ホームルームで行う指導と道徳の時間で実施する指導として、以下の表5のように分割した。そして、健康指導・進路指導・学業指導領域については、ホームルームと道徳の時間でその内容をさらに分割することができるとされている。まず、健康指導は「ホームルーム:環境衛生的な習慣形成について/道徳:危害予防(自分を大切に、他人を大切に)」、学業指導は「ホームルーム:学習の計画、仕方など/道徳:学習上における人間関係の問題など」、進路指導は「ホームルーム:適性の発見、職種の選定/道徳:職業と人生、進学者と就職者との人間関係」と分けるようにすべきとされていた26。千葉県浪花中学校では、ホームルームという特別教育活動の時間の中で道徳教育が取り入れられていたように、生徒の生活や人間関係に対する指導については、具体的な地域生活や社会生活、日常生活と関連付けて実施しようとしていたことが窺える。さらに、本研究会にて資料を多数収集することができた千葉県の一地域として、山武郡の教育の実態について分析する。『新教育二十年のあゆみ』(1966年)には、戦後復興期における山武郡の新制中学校の実態が記載されている。当時の山武郡における新制中学校の状況については「当時、地域社会の要求や必要に答える教育、子どもの要求にこたえる教育が協調され、これを基盤として、先ず地域カリキュラムの構成と学習指導法の改善が要請された」27と述べている。特別教育活動については「特別教育活動の領域では目覚ましい活動が展開された。これは新教育の申し子として珍重され、生徒会・ホームルーム・クラブ活動など生徒の自発活動を促す推進力と※宇留田敬一『中学校道徳指導の計画』より筆者作成25

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