教育評論第38巻第1号
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い範囲の指導を行っており、また、それぞれの活動に対して具体的に目標や指標を、各学年で設定していたことがわかる。さらに、「生活環境への参加と奉仕」「社会への参画と生活の創造」「社会的都民的、道徳的指導社会生活の理解」「正しい社会観、人生観の確率職業指導進学指導」「正しい進路を見定めて準備する」など、生徒が進路や社会参画に関わる目的を設定することで、社会との接続を強く意識させる必要があったと見ることができる。そして、高等学校への進学率が十分に高まっていない1950年代においては、多くの生徒が中学校卒業と同時に地域社会での生活に参画することとなるため、地域社会の構成員として意識を高めることや、地域社会の課題を題材とした教科外の活動に取り組むことは、中学校の所在する地域においても重要な意味を持つと考えられる。また、東京都では、生活指導研究校において、道徳教育や特別教育活動を主題として研究が進められるといった背景もあり、特別教育活動と道徳教育の関係性について着目されている節があったと考えられる。次に、千葉県の教育実践について、千葉県の一地域である山武郡に焦点をあて、どのような教育が実施されたのかを見ることで、より詳細な特別教育活動の実態について分析していきたい。1950年代の千葉県の特別教育活動の実施について示された資料として『生徒指導指針』(1951年、千葉県教育庁指導課編)がある。同書では当時の千葉県の特別教育活動の状況について「ある学校では学級経営や、ホームルームの問題から生徒指導への道を切り開いて行ったのに対してある学校は生徒会の結成にその手がかりを求めて逐次指導の組織を打ち立てている」21と述べられており、各学校でホームルームや生徒会活動への取り組みが実施されている。また「県の指定研究学校の中にも特別教育活動を研究主題にとりあげた学校も相当あって、その研究が付近の学校を刺戟して一般の水準を高めている。県下の大部分の学校が実際運動上の差異はともかくとして、生徒会、ホームルーム、クラブ活動、学校集会等を行っている」22と述べられている。つまり、特別教育活動が指定研究学校の研究主題として取り上げられる程に重視されており、そのような学校の取り組みが県下の他の学校にも影響を与えていたと考えられる。大田区の中学校の場合北区の中学校の場合■飾区の中学校の場合渋谷区の中学校の場合※『現場の教科外活動』224頁-225頁より作成20。169(2)千葉県の教育実践表4 東京都の中学校のおけるホームルームでの指標第一学年 基本的生活能力の把握と育成第二学年 生活環境への参加と奉仕第三学年 社会への参画と生活の創造第一学年 自主的態度の形成、自主的学習の指導第二学年 社会的都民的、道徳的指導社会生活の理解第三学年 正しい社会観、人生観の確立職業指導進学指導第一学年 学校生活の充実第二学年 主として個人的、家庭的、社会的発達をはかる第三学年 正しい進路を見定めて準備する第一学年 新しい学校生活になれよう第二学年 立派な身体・円満な人格をつくろう第三学年 有能な人になろう

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