教育評論第38巻第1号
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さらに「生徒はこれらの活動を通して学級や学校に関する諸問題を話し合い、解決し、仕事を分担し処理しながら、自主的な生活態度を養い、集団の規律を学び取り、真理を追求する態度をつちかい、社会奉仕の喜びを感得し、さらに個性を伸ばすなど道徳教育上のねらいとするものを多く身につけることができる」14と述べており、加えて「この意味において特別教育活動が、道徳教育上重視されることは当然である」として、特別教育活動と道徳教育の関係性が重要であることが言及されており、教科外の領域の機能的連携の必要性が主張されている。そして、道徳の時間と特別教育活動との関係で特に問題となるのは、ホームルームであった。指導書でもホームルームと道徳教育の関係性については「ホームルームとは、学校生活を構成する一つの単位としてすなわち「学校における家庭」として、まず生徒を楽しい雰囲気の中におき、生徒のもつ諸問題を取り上げて、その解決に努力し、生徒の個人的、社会的な成長発達を助成したり、職業選択の指導を行ったりするところであるとされてきた」として、ホームルームが生徒にとって重要な場所であることを述べた上で「ホームルールは生徒の自治的な活動の単位として運営されるとともに、また、教師の指導管理の機能が、かなり積極的かつ直接的に行われる場としても考えられてきた。このようにして、ホームルームは中学校の道徳教育の上でかなり重要な役割を果たしてきたといってよい」15として、その重要性を指摘している。つまり「学校における家庭」すなわち、学校生活の基本的な単位としてホームルームが位置付けられた故に、自治的な生活体験を通じ、道徳と特別教育活動とを有機的に関連付けて実践し得る場所として、ホームルームは重要な意味を持ったといえる。さらに、そこで期待されたのが「生徒の個人的、社会的な成長発達」や「職業選択の指導」であったため、その発展的な指導の場として、生徒が卒業後に実生活を送る地域への注目も高まったと考えられる16。以上、1950年代後半以降に出版された指導書には、実際の新制中学校においても、どのように新教育課程におけるその内容を指導するかが示されていた。戦後、様々な書籍が刊行され、教育実践も提唱されていたが、本項目で取り扱った指導書では、教師から生徒への積極的な働きかけや、一定の方針・指針のもとで教育を実施することが求められていたことがわかる。その理由として考えられるのは1958年の改訂学習指導要領における法的拘束力の強化であり、教育現場に対しどのような教育をすべきかが示されたためと考えられる。ただ、全国的に一定の方針・指針のもとに教育が展開しつつも、とりわけ特別教育活動や道徳などにおいては、生徒の実生活を題材に、生活体験を通じた指導が重んじられ、実際の各学校の教育においては、地域の実状を反映した実践が模索されていた様子も窺えるが、この点は次節で検討する。では、実際に教育の現場では、ここまで着目してきた特別教育活動及び道徳教育の指導はどのように展開していたのだろうか。以下、本研究会でまとめられた論文から、個別地域の事例について、特に「教科外活動」及び「特別教育活動」、そして「道徳の指導」について地域に実際にどのような教育実践が行われていたのかを報告する17。1674、各地域における教育実践

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