教育評論第38巻第1号
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書が文部省より発刊された。それらの指導書では、戦後の新教育において行われるようになった教科や教科外活動に対して、指導の際の細かい留意点等を示している。これらの指導書はどのような内容であり、そこで求められた教育実践とはどのようなものであったのかを分析していく。まず、戦後に行われるようになった教科外の教育活動である特別教育活動について、その指導書である『中学校特別教育活動指導書』(1960)に記載されている内容を見てみる。特別教育活動においては、その指導の一般的観点として以下のようなものが示されている。1、生徒の自発的な活動を助長することがたてまえであるが、常に教師の適切な指導が必要であること。2、なるべく生徒がみずから計画を作り、自主的に活動するのを奨励し援助するように図ること。3、各活動が中学校の教育目標の達成に貢献する役割を明確化して、いっそう効果的な指導のできるよう配慮すること指導のできるように配慮すること。4、生徒の発達段階や個人差、男女間で応ずる配慮を忘れないこと5、学校や地域社会の実情に即して、活動が計画され、展開されるように配慮すること6、特別教育活動に属する各活動相互の関連に留意すること7、各教科、道徳及び学校行事等との関連に留意すること8、生徒全員が各活動になんらかの形で参加できるよう配慮をすることが望ましいこと9、特別教育活動を過大視したり、過小視したりしないように心がけること11以上のように特別教育活動は戦後の教科や領域の中でも、生徒の自発的・自主的取り組みについては「たてまえ」であるとされており「教師の適切な指導が必要な」教育活動であると示されている。この背景には、1958年改訂の学習指導要領が法的拘束力を持ち、統制的な教育が実施されるようになったためと見ることができる。その一方で、他教科との関連性を高めることや、学校や地域社会に即した計画立案や自主的活動の奨励など、生徒が主体性を発揮するための諸注意が提示されており、教育指針の変遷過程を見ることができる。その他に着目すべき点として、指導書では教科間や領域間の関係性について言及している。例えば、特別教育活動については、道徳教育との関係で言及されており「フェアプレーの精神とか、全体と個の関係とか、真理の追求とか、会議における民主的な態度とかいうようなことは、道徳の時間において、特別教育活動における問題を手がかりとして、もう一度掘り下げられてこそ、高められた自覚にまで導くことができる」12として、その関係性が述べられている。また、道徳についての指導書である『中学校道徳指導書』においても、特別教育活動との関係について、詳細に記載されている。同書における道徳と特別教育活動の関係については「特別教育活動の領域は広範囲にわたっているが、ホームルーム、生徒会、クラブ活動、集会活動などはそのおもなものであって、これらはそれぞれ独自の目標や活動内容を持っている。それらはいずれも教師の指導に従いながら、生徒の自主的活動を基本とするものである」13として「教師の指導に従いながら」も生徒の自主的活動を基軸とすると述べている。166

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