─ 批判的思考理論と教師の熟達化に着目して ─答を行うことで促進され、問いは対話を促す重要な装置として機能している点に独自性を見いだせる点である。以上から、学習指導要領と概念型学習モデルの差異は全体として中〜大程度であり、国内の一条校で勤務する教師らは、概念型学習モデルを指導する場合、実践への適用にあたり何らかの課題を感じている可能性が大きいと予想される。では、概念型学習モデルは「Language B」の実践ではどのように適用されているのだろうか。本章では概念型学習モデルの授業での適用の実態を捉え、実践の場でどのような学習活動が行われているのかを探究し、概念型学習モデルがいかにして批判的思考を育成しようとしているのかを解明する。概念型学習モデルの適用の実態や学習活動の実際を捉えるため、Language Bを指導する3名の教師らに対するフォーカスグループインタビュー(以下、FGI)を用いた調査を行った。FGIとは、具体的なトピックにフォーカスをあて、同一のテーマに興味をもつ少数のグループを対象として、広範囲な情報を集めることを目的とした質的調査の手法である(Vaughn et al., 1996)。鈴木(2002)はFGIの特徴として、参加者同士の相互作用によって豊富な情報を収集できること、調査者が事前に予想しなかったような情報を引き出す効果が得られること、を挙げている。近年では、教育学領域における研究でも積極的に行われている調査手法であり、調査手法の妥当性や信頼性に対して一定の評価も得られている。本研究では、概念型学習モデルを踏まえた授業を行う教師がどのように実践の場でモデルを適用しようと試みているのかを捉え、モデルと実践との落差について、深層的で幅広い情報を得ることを目的としていることから、FGIを用いることは適切であると判断した。なお、調査対象者の属性は表7に示す通りである。調査対象者らは、本研究への参加同意が得られた日本語を母語とする日本人英語教師である。日本の教員免許状を保有し、国際バカロレア機構が認める教科指導「英語」の資格も有している。全員が国際バカロレア機構が定める「カテゴリー1」(IBDPでの指導レベルが初級レベルである教師を対象とするカテゴリー)のレベルセッション名セッション12022年11月15日(火)19:00〜21:00セッション22022年11月28日(月)19:30〜21:30セッション32022年12月11日(日)8:50〜10:50エリクソンによる概念型学習モデルの英語授業での適用表6.調査日時と形態開催日時筆者作成11実施形態オンラインオンラインオンライン4.概念型学習モデルの受容実態と教師の指導観4.1.調査対象者とデータ収集方法FGIを用いた調査日時・形態は表6に示す通りである。全3セッションを用意し、それぞれのセッションの時間は120分とした。調査は新型コロナウィルスによる影響及び調査対象者らが遠隔していることから、オンライン会議システムを利用して実施した。モデレーター(進行役)は筆者とし、インタビューの内容はオンライン会議システムの録音システムを用いて収集した。
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