キーワード:新制中学校、地域と学校の関係、戦後教育改革、特別教育活動、道徳教育【要 旨】本稿は、教育総合研究所の研究部会の成果報告である。本部会では、戦後の新制中学校の教育実践の実態を明らかにすることを目的に研究を進めた。特に地域社会の課題に向き合う活動や、地域的特色を活かした活動など、地域と教育との関係を明らかにすることに重点を置いた。以上の目的を達成するために、本研究では、新制中学校に関連する多くの資料を収集し、地域における新制中学校での教育実践についての記述を分析した。本稿においては、それらの資料を分析した成果の一部として、新制中学校における教育指針のあり方について、各教科における指導書の記述の分析、各地域における教育実践、さらに、戦後の新教育の代表的なものとして、主に教科外活動及び特別教育活動(特別活動)の実践内容をまとめた。本稿は、2021年度及び2022年度の教育総合研究所研究部会の成果報告である。本研究部会では、戦後の教育改革によって成立した新制中学校における教育実践に着目し、地域ごとにどのような教育実践が行われていたのかを、実践事例を取り上げながら究明することを目指し、研究を進めた。新制中学校は、戦後教育改革の柱の一つであり、民主的な社会、とりわけ地域社会の担い手を育成する重要な教育機関であった。また、発足時には地域住民の協力・参画により学校が設立され、地域社会の課題と向き合う豊かな活動が展開された。そこで、筆者らは、2019年度から2020年度にかけて教育総合研究所の公募研究の助成を受け、中等教育機会の保障という理念が、地域でのどのような議論を経て、いかなる学校の枠組みや教育内容で実現されたか実証的に究明してきた1。さらに2021年度から2022年度にかけてはこの成果をより発展させ、新制中学校について教育実践的側面からその性格を究明すること目的に、特に地域社会の課題に向き合う教育活動や、地域の特色を活かした活動などに着目し、地域的視点からその教育実践の特質や意義を検討してきた。本研究の意義を述べれば、新制中学校における教育実践に着目し、今日の教育実践の原点を探るものであり、学校と地域の関係性を踏まえた教育実践とはどのようなものであるべきなのかといった問題など、現代の教育課題を考える上での基礎的知見を提供することが期待される。161はじめに【研究報告】新制中学校の教育実践に関する実証的研究─地域的な視点からの分析を中心に─雨宮 和輝・長谷川鷹士久保田英助・野口 穂高
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