101つめの概念の取り扱いについては、学習指導要領解説(外国語)においては「コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,再構築することとは,多様な人々との対話の中で,目的や場面,状況などに応じて,既習のものも含めて習得した概念(知識)を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,課題を見いだして解決策を考えたり,身に付けた思考力を発揮させたりすることであり」(p.12,太字・下線は筆者による)と説明されている。すなわち、概念は知識と同義後として扱われ、対話を通して知識を拡張させることが肝要であり、概念理解はコミュニケーションを成立させる必須要件として捉えている。一方、概念型学習モデルでは、前章で論じたとおり、概念理解は対話を通して行われるものである。この点においては学習指導要領の理念と共通しているものの、概念型学習モデルでは、概念は転移可能な装置とみなし、究極の目標は批判的思考を高めることとしており、コミュニケーションを成立させる要件とはしていない。従って、概念を取り扱う目的と違いから、差異のレベルは中程度と判断した。2つめの項目である取り扱う概念については、学習指導要領において「外国語で表現し伝え合うため,外国語やその背景にある文化を,社会や世界,他者との関わりに着目して捉え,コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,再構築すること」(p.12)と説明がされている。概念型学習モデルとの対応ではaudience(聞き手・読み手)・purpose(目的)・meaning(意味)・context(文脈)に対応していると思われ、variation(違い)については明示的に言及はされてない。従って、概念型学習モデルにおける概念の独自性はvariation(違い)にあると言える。そこで、中程度の差異があると判断した。3つめの項目である取り扱う題材(テーマ)については、学習指導要領では日常的な話題と社会的な話題を取り上げることを求めており、電子メールやパフレット、説明文や論説文を取り扱うことを求めている。そして言語の使用場面として、暮らしに関わる場面、多様な手段を通じて情報などを得る場面、旅行などを挙げている。一方、具体的な題材(テーマ)への言及はない。概念型学習モデルでは、題材(テーマ)は概念理解を深めるために設定されており、核となる4つの概念とパッケージ化されている点とは大きく異なる。従って、差異は大きいと判断した。4つめの項目である問いの位置づけについては、学習指導要領では「教師が生徒に質問をしながら発話を引き出したり,自分の言いたいことを更に効果的に伝えるための方法に生徒自身が気付くように,生徒の発話を違う表現を使って言い換えたりすることなどが考えられる」(p.47)とある。問いそのものへの言及はなく、質問することを通して気持ちや考えを引き出したり、発話を促したりするための起爆剤として機能することが求められている。概念型学習モデルでは問いは対話を誘発する装置であり、批判的思考を高めるための核であると位置づけている点とは大きく異なる。そこで、差異の程度は大きいと判断した。以上を整理すれば、学習指導要領に基づく授業と概念学習モデルの差異は次の通りとなる。学習指導要領に基づく授業は知識の拡張をめざすために概念に着目しており、題材(テーマ)と概念は切り離されて取り扱われている点である。そして問いの機能は概要や要点を捉えたり、発話を促したりする起爆剤として機能させようとしている点である。一方、概念型学習モデルに基づく外国語授業では、批判的思考を高めることを究極の狙いとし、概念理解は3種類の問いへの応
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