教育評論第38巻第1号
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─ 批判的思考理論と教師の熟達化に着目して ─業概念は知識と同義語として扱っている。知識を相互に関連づけることで理解を深化させる重要性を説く。知識の拡張により、物事への理解を深める学習を支持概念理解をさせることは指導の核とはしていないが、概念型学習モデルで取り扱う、言語特有の役割への理解を深めるために取り扱う5つの概念(表4)のうち、variation以外を網羅している。日常的・社会的な話題の両方を取り扱い、言語の使用場面例を挙げているが、題材(テーマ)の指定はない。(variation「違い」の概念を学習指導要領では網羅していないため。)では、概念そのものの捉え方や取り扱う概念の種類、取り扱う題材(テーマ)、問いの扱い方は、現行の学習指導要領に基づく外国語授業と、概念型学習モデルに基づく外国語授業では、どのような差異があるのだろうか。学習指導要領解説の外国語科と「Language B」のSubject Guideを対象とし、それぞれの特徴をまとめ、差異の大きさを明らかにしたのが表5である(表5)。対象とした学習指導要領上の科目は、文部科学省(2021)で「Language B」と対応している科目と説明する「英語コミュニケーションⅠ」とした。エリクソンによる概念型学習モデルの英語授業での適用International Baccalaureate Organization. (2018, pp. 23-24)を基に筆者作成文部科学省(2018), International Baccalaureate Organization (2018)を基に筆者作成概念を取り扱う狙い概念型学習モデルを踏まえた英語授業概念は転移可能な装置とみなしている。マクロな概念またはミクロな概念を取り扱うことを通して、批判的思考を深める学習を支持4つの核となる概念(図4)と、言語特有の役割への理解を深めるために取り扱う5つの概念(表4)を網羅するよう求めている。題材(テーマ)は概念理解を深めるために設定されており、核となる4つの概念(図4)と題材はパッケージとして取り扱われている。問いは、概念理解を深める核であり、対話を誘発し、批判的思考を高める装置として重要な要素であると位置づけられている。(中)(対話を軸としている部分は共通しているが、概念の役割と学習目標が異なるため。)(中)(大)(概念型学習では、概念と題材(テーマ)は一体として取り扱われているため。)(大)(「問い」に対する見方や考え方が大きく異なるため。)93.2.学習指導要領に基づく外国語授業と概念型学習モデルに基づく外国語授業の差異表4.「Language B」で言語特有の役割への理解を深める鍵となる概念とその狙い取り扱う概念audience言語とは、コミュニケーションをとる相手にふさわしいものでなければならないことを理解する。言語とは、コミュニケーションの場面や状況にふさわしいものでなければならないことを理解する。言語とは、コミュニケーションを取る際に、意図や目的、結果を把握したり、伝えたりするためにふさしいものでなければならないことを理解する。言語とは、メッセージを伝えるためにさまざまな方法が取られる性質をもつことを理解する。言語とは、違いが存在するものの、一般的にはお互いを理解するために使用されるものであることを理解する。表5.現行学習指導要領に基づく外国語授業と概念型学習モデルを踏まえた外国語授業の差異差異のレベルと理由(大中小の3段階で判断)比較項目現行学習指導要領に基づく英語授1. 概念の取り扱い2. 取り扱う概念3. 取り扱う題材4. 問いの位英文の要点や概要を捉えたり、生徒の発話を引き出したりするために用いられるが、問いを通して思考を深めることは直接的な目的であることは明示されていない。置づけcontextpurposemeaningvariation

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