教育評論第38巻第1号
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注)Williams (2015, pp. 14-15)の概要表にある情報を筆者がまとめたもの。学生は講義についていくこととノートを取ることに精一杯で学生による質疑応答(の発言)が限定的である〈スウエーデン〉(Airey & Linder, 2006);語彙力の差で読解スピードが遅いせいで、学部によって授業の理解に差がある〈台湾〉(Chang, 2010);資料の内容をL2で理解することに余分なプレッシャーがかかり、EMIではより計画性が求められる〈スペイン〉(Doiz et al., 2010);(EMIプログラムが)性急に導入されたことにより、教科ごとに異なる学生の要求が満たされていない〈韓国■(Joe & Lee, 2012);L1が部分的にでもあった方が学生にとっては理解が容易である〈トルコ■(Karabinar, 2008);学生の多様な能力や特定の要求に配慮されておらず応じられていない〈韓国■(Kim, 2011);L1(である韓国語)の資料が利用されると英語力の育成を阻む〈韓国■(Kim et al., 2009);理系プログラムのEMIの方が進んでいる・英語のみ使用する教員が求められる〈韓国■(Kim & Sohn, 2009);、(EMIプログラムだが)学生の言語能力の低さのせいでL1との併用が求められる〈トルコ■(Somer, 2001);大学は(EMIで)言語と教科内容の両方で失敗している。学生の英語知識の不足と教科内容への興味の欠如を招いている〈ヨーロッパ・アジア・アフリカ〉(Tamtan et al., 2012)。以上の記述、特に下線部から、大学運営側は、異なる状況や学生の個別の言語能力、あるいは専門科目の内容や学部の状況など、より個別的できめ細やかな対応が求められていることが分かる。前節同様、L1による支援の必要性が挙げられると共に、特に初年次教育の視点の重要性も示唆されている。本節では10篇の論文が対象となっている。文献情報は表7に示す。なお、文献が発行された時と各国の現況は異なる場合があることも留意されたい。文献発行年香港、インドネシア、韓国(2篇)、オランダ(2篇)、スペイン(2篇)、台湾、トルコ(アルファベット順)2001年―2013年137研究方法質的研究2、量的研究2、混合研究5、レビュー論文1(計10篇)4.3.EMI受講生に対する支援に関する課題 表7 サポートに関する課題の対象論文情報対象の国と地域EMIの教育環境の差異(demands of different academic situations)に関する課題についての内容は以下のとおりである。EMIのサポートに関する課題の内容は以下のとおりである。EMIコースに見合う十分な英語力を持たない学生ならびに教員に対する支援はほとんどない・支援の欠如は財政的な制約によるものである。学生は自分でサポートを探し、費用を支払う必要があった〈韓国■(Byun et al., 2011);サポートプログラムに課題がある・大学はL2によるプレゼンテーションスキルのサポートを提供する必要がある〈台湾■(Chang, 2010);大学運営側からのサポートの欠如・経済的支援により優秀な教育スタッフを提供すべき・ヨーロッパ

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