教育評論第38巻第1号
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注)Williams (2015, pp. 7-8)の概要表にある情報を筆者がまとめたもの。注)Williams (2015, pp. 10-11)の概要表にある情報を筆者がまとめたもの。に刊行された10篇の論文で、文脈はヨーロッパおよびアジア各国と地域である。表5は対象文献の文献発行年、対象の国と地域および研究方法をまとめたものである。以下、各文献で挙げられるEMIの言語面での課題である。Williams(2015, pp. 7-8)の概要から関連個所を抽出、翻訳した。なお、下線は筆者による。教員(lecturer)の言語能力の不足(limited/insufficient proficiency)およびそれに起因する学生の理解不足〈スペイン、台湾〉(Aguilar & Muñoz, 2012, 2013; Chang, 2010);EMIの授業に初めて接する時の困難さ(initial exposure to EMI)〈香港〉(Evan & Morrison, 2011);L1、L2に関わらず学生が授業のコンセプトを把握するのが困難・授業進度が遅い・非英語母語話者である教員のL2への切替の困難さ〈ノルウェー・ドイツ〉(Hellekjær, 2010);教員、学生の言語力不足によるラポール、理解のチェック、ディスカッションが授業内で不足している■インドネシア■ (Ibrahim, 2001);EMIで実施することで内容知識が十分に伝わらないのではないかという懸念を教員が抱く・EMIがナショナル・アイデンティティの軽視につながる懸念〈デンマーク〉(Jensen & Thøgersen, 2011);(EMIでありながら)複雑な内容はL1での説明を教員、学生共に好む〈韓国〉(Kim, 2011);1年生の語学力不足。教員の口頭での言語能力の不足<ベトナム〉(Manh, 2012);学生が教員の言語力に対して不信感を抱いている〈オランダ〉(Mellion, 2008)日本とは文脈が異なる上、言語能力の問題は、大学、実施形態や留学生の比率など、複雑な要因が関係するため、全てを同じ土俵で語るのは困難であるが、下線にあるような理解度のチェック、ディスカッションの促進、授業時の不安、あるいはL1でのサポート等は、いずれの文脈でもSA/TAによる何らかのサポートで一部改善の余地があるように思われる。本節では16篇の論文が対象となっている。文献情報は表6に示す。136文献発行年デンマーク、香港、インドネシア、韓国、オランダ、ノルウェー・ドイツ、スペイン(2篇)、台湾、ベトナム(アルファベット順)2001年―2013年表6 教育的環境の差異による要求に関する課題の対象論文情報文献発行年アジア、ヨーロッパ・アジア・アフリカ、フランダース(ベルギー)、イラン、韓国(5篇)、スペイン(2篇)、スウエーデン、台湾、トルコ(3篇)(アルファベット順)2001年―2013年研究方法質的研究2、量的研究3、混合研究3、レビュー論文2(計10篇)研究方法質的研究2、量的研究9、混合研究3、レビュー論文2(計16篇)4.2.EMI授業環境に関する学生の要求表5 学生および教員の言語能力に関する課題の対象論文情報対象の国と地域対象の国と地域

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