しながら、日本のSA/TAの実態調査は、運営組織やアシスタント学生のそれぞれの視点から行われてはいるものの(貝原、2011;藤田、2017他)、大規模調査は近年実施されておらず(佐藤、2019、p. 12)、SA/TAの果たすべき役割や必要な能力、養成プログラム、教員との関係性など、更なる調査研究が俟たれる。TAの研修制度に関しては、「TAの資質向上には不可欠なもの」(北野、2006、p. 99)とされながらも、多くの大学が科目担当教員の裁量に委任しており、必ずしも大学全体のシステムとして実施されているとは言えない現状がある。しかし、TAの効果的活用を考慮した場合、SA/TAの事前研修・トレーニングにおける適切なオリエンテーションを実施することは極めて重要であり、その制度化を含め全国的に検討していくことが求められる。筑波大学教育計画室(1988)の報告書によると、同大学の一般教養の科目の評価をする目的で大学3年生を対象に、過去に学生自身が授業したことのある一般教育科目をどう思うかについて、「回顧的授業評価」として、授業を振り返る形で5学類・学群4を対象にアンケート調査を行い、そのデータを分析した5結果が報告されている。同書の5章「「英語」の実施状況および新しい試みの実施とそれらの評価」(pp. 29-36)の4節に「ティーチング・アシスタント(TA)制の試み」として報告がされる。表4は、報告書を基にその実施内容を筆者がまとめたものである。TA位置づけ目的対象科目TA学生属性頻度報酬対象コマ数項目近年(当時)のTA採用の大学増加により、充実した授業を行うためにTAを積極的に導入する機運が生じているため。採点補助者/授業協力者英語授業の活性化を計り、学生により高度の語学的訓練を施すため。英語IおよびII筑波大学大学院(修士、博士)在学中の英語学または英語教育学専攻の学生5名1週1コマ〜2コマ、労働時間は週3時間(時間給)規定によりアルバイト料金を支給6コマ一般英語担当教員の中の6名(指名)。条件として、TAの利用に積極的な姿勢を示し、語学教員として適切な年数の教育歴があるが、あまり長すぎないこと(TAを用いない授業方法に慣れきっていないこと)。昭和62年(1987年)10月末/11月初〜昭和63年(1988年)2月実施経緯担当教員実施期間注)筑波大学教育計画室(1988、pp. 35-36)の報告書の内容を筆者がまとめたもの。4 自然学類・基礎工学類(理系);人文学類・人間学類(文系);芸術専門学群(芸術)。5 回収率は25%(人間学類)〜70%(芸術専門学群)で全サンプル324名を分析。内容1333.筑波大学におけるSA/TAの活用事例表4 筑波大学における1988年当時のTA制度の試み:実施文脈EAP/EMIでのSA/TAの在り方を考える上で、筑波大学が、1987〜88年に他教科授業に先駆け、一般教育の英語に限定して「教育補助者(TA)」を設置した事例を紹介し、そこから得られる知見について考察したい。
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