教育評論第38巻第1号
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132図2 ティーチング・アシスタント(TA)の活用状況(2):TAの業務内容2  慶應義塾大学では国際センター所属のSAが留学希望者に対するアドバイスや相談会の企画・ 運営補助などの業務を担い、足利大学では、学習支援室を設置し、そこに SA が講師として常駐する(佐藤、2019、p. 10)。3 例えば、学生支援課、図書館、留学センター等の組織。前述の2000年6月に文部省高等教育局で出された報告書は、「学生の立場に立った大学づくりを目指し」た画期的なもので、「大学における学生生活の充実に関する調査研究会」の座長であった廣中平祐・山口大学学長(当時)の名前から、通称「廣中レポート」と呼ばれている(立山、2013;佐藤、2019他)。前節で述べたように、この提案がSA制度の導入のきっかけになった。しかしながら、SAが従事するのは、教室での電子機器のセッティング、資料や出欠票の配布・回収・整理といった教員支援業務や、IT実習での技術補助のような業務が多いことが先行研究で示されるが(岩﨑他、2008;立山、2013他)、SAを積極的に活用する大学もある2。SAは正課授業内外での学習支援活動を行うことができる。これは、「正課の授業の支援」を目的とした文部科学省による「TA実施用鋼」により規定されているTAと異なる点である。これにより、運用の自由度が高くなり、活動の場が広がる可能性がある(佐藤、2019、p. 11)点は興味深い。図2はTAの業務内容で、正課授業支援の活動に限定されていることがわかる。TAの場合、活動の責任者が授業担当教員で、「正課内の授業支援」であるのに対し、SAはそれに加えて「正課外の学修支援」が可能で、その場合の活動責任者はさまざまな学習支援の提供者である3。しか注)文部科学省(2004)より引用。2.2.SA/TAの業務内容SAの活用については、今後、学生の希望も踏まえつつ、大学院学生だけでなく学部の上級生についても、このような機会を積極的に与えていくことが望まれる(文部省高等教育局、2000)と20年以上前から文部省(当時)により提案されていることも興味深い。この報告書はまた、SAの活用は授業運営に役立っており、SA自身が活動を通じて学習に対する意欲が向上している点、更には、SAは TA よりも履修学生に年齢が近いことで、「より身近な支援者」(佐藤、2019、p.2)として機能していることなどが報告されている(岩崎他、2008)。これはまさに、“Students helping students”というピア・サポート(Newton & Ender, 2010)の利点であり、SA/TAの持つ大きな力の一つであると考える。

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