注) 文部科学省(2004、2016)公表データを筆者が一覧にまとめたもの(ただし2016年公表のデータに合わせ、2004年公表のデータの小数点第2位以下は四捨五入して掲載)。認することで、さらにその効果の理解を深めることができる。また、制度を作る側と使う側がコミュニケーションを取り制度の改善を進める(沖、2012;山下、2012)という事例研究の報告もある。以上を踏まえ、日本での学生アシスタント(SA)/教育アシスタント(TA)システムの取り組みへの省察を概観した上で、アカデミック英語(EAP)および英語による専門科目(EMI)におけるSA/TAの活用について考察する。本章では、第一に日本での学生アシスタント(SA)/教育アシスタント(TA)の取り組みに関する研究・報告を概観する。次に様々な国や地域の文脈でのEAP/EMIにおける学生が直面する困難に関する文献を詳細に分析し、EAP/EMIで、どのようなサポートが必要とされうるかを概観する。これらの先行研究を踏まえ、5章の考察においては、SA/TAがどのように関わることができるのか、制度として提言できる点は何であるかという議論につなげたい。序論で記述したように、日本のTA制度はアメリカの大学で実施されてきたTA制度に倣って導入された経緯がある。アメリカのTA制度の歴史・背景についての詳細は、苅谷(1986、1988、2000)、和賀(2002)、吉良(2005)に詳しいので参照いただきたいが、北野(2006、p. 84)は苅谷(2000)を引用しながら、その意義として次の4点にまとめている。1)大学教員の指導・管理下での運用は、大学の授業改善に貢献することができること、2)TAが大学の授業に参加することで教授能力を磨き、TAにキャリア形成の機会を提供すること、3)大学院生であるTAに財政的援助の側面を担うこと、4)大学にとっても効率の良い授業運営はコスト削減に貢献し得ること。本稿では、特に第1の点に注目して日本のTA制度について考察したい。日本におけるTAの活用状況の一部として、2002年度から2004年度および2014年度の文部科学省が公式に発表して確認できるものをもとに表1にまとめた。数字はTAのみでリサーチ・アシスタント(RA)は含まれない。なお、給与は一人当たり月額0.8万円で、決して多くはない。佐藤(2019)が指摘するように、「TA雇用によって得られる経済的支援は微々たるものである」 (p. 8)。表1 ティーチング・アシスタント(TA)の活用状況(1):TAの人数(単位:万人) 合計6.887.209.208.482002(H14)年度2003(H15)年度2004(H16)年度2014(H26)年度国立4.324.414.395.40私立2.432.602.812.70公立0.130.192.000.381292.日本における学生アシスタント(SA)と教育アシスタント(TA)2.1.全国における制度
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