教育評論第38巻第1号
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キーワード: 学生アシスタント(SA)、教育アシスタント(TA)、自律学習支援、英語による専門科目(EMI)、アカデミック英語(EAP)、SA/TAトレーニング【要 旨】本稿では、まず日本での学生アシスタント(SA)/教育アシスタント(TA)システムの取り組みに関する既存の論文をレビューし、その上でアカデミック英語(EAP)および英語による専門科目(EMI)におけるSA/TAの活用について考察する。SA/TA制度は、大学教育現場において重要な役割を果たしており、本稿はその効果についての理解を深めることを目的とする。SA/TA制度は、授業という枠組みの中、担当教員の管理・責任の下、授業内外での個別的な学習支援や教員の補助的なサポートを提供する役割を果たす。利点として、学生の授業理解の促進のみならず、効率的な授業運営、教員と履修学生とのコミュニケーションを円滑化、更には、ピア・サポートを通じてSA/TAたち自身の学びや教育経験にも繋がる。特にEAP/EMIコースにおいては、言語的な障壁を克服するための重要な架け橋として機能することが期待される。一方、課題や改善点については、履修学生との関係構築やコミュニケーションのスキルが不足、またSA/TAの活用環境や事前のトレーニングが不適切である場合、授業の質に影響を及ぼし効果的な成果が期待できない可能性がある。したがって、SA/TAの効果を最大限に引き出すための環境整備や、事前トレーニングといったプロセスへの適切な配慮が必要となる。EAP/EMIコースへのSA/TA制度の適用への提言として、以下の3点が挙げられる。1)当該授業においてどのようなサポートが必要であるかニーズ分析を実施すること、2)現在のSA/TAの活用実態やその効果について、受講生および担当教員に加えSA/TAへのアンケート等を通して適切に把握すること、3)SA/TAに対する定期的なトレーニングとフィードバックの提供を通じて、その能力向上を支援すること。今後の研究や実践において、全ての利害関係者にとってSA/TA制度の効果的な運用方法を探求するべく、組織的に検討することが重要である。近年、学士課程の学修を充実させることを目的の一つとして、正課内外において授業支援・学習支援の取り組みが多くの大学で導入されている。その中でも、大学院生によるティーチング・アシスタント(以下、TA)ならびに学部生によるスチューデント・アシスタント(以下、SA)といった学生自身による授業支援は、正課内での取り組みとして注目される(安部、2017;佐藤、2019;山内、2011)。日本でのTA制度は、もともと、アメリカの大学のTA制度を規範として導入されたことが知られるが、諸外国とは違う形で独自にTA 制度が運用されてきた(荻野、1271.序 論─文献レビューを通したEAP/EMIコースへの示唆と課題─制度への一考察松村 香奈・守屋  亮清田 顕子・工藤 秀平学生アシスタント(SA)・教育アシスタント(TA)

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