教育評論第38巻第1号
120/208

どの科目があった。さらに、芸術技術に関しては、図案、写生、漫画、口琴(ハモニカ)、国楽(伝統音楽)、平劇(京劇)、演劇、舞台管理、舞台化粧などの科目が開設された。最後に、民衆教育にとっては、民衆との信頼関係を築き、現場でさまざまな技能を身につけることが非常に重要である。故に教育学院においては、各種の実践的なカリキュラム中心の学修により、民衆教育の第一線で即戦力となる人材育成が求められた。以上のような配慮から、教育学院には多種多様なカリキュラムが設置された。これらのカリキュラムは具体的に、①普通必修科目(入学1年目に履修する科目)、②民衆教育科目(民衆教育学系、民衆教育専修科の必修科目)、③農事教育科目(農事教育学系、農事教育専修科の必修科目)、④分組科目(民衆教育学系、農事教育学系の選修科目)、⑤選修科目(社会からの多様なニーズに対応する選修科目)という5種類から構成された。また、学科の違いによって多少の差があるが、ここでは、4年制の民衆教育学系のカリキュラム編成を確認する。民衆教育学系の科目編成については、①普通必修科目、②本系必修科目、③分組科目、④選修科目という4つの類型がある。〈普通必修科目(合計51単位)〉においては、党義(4単位)、体育(3単位)、軍事訓練(6単位、女子免除)、家事(4単位、男子免除)、看護(2単位、男子免除)、国文(6単位)、外国文(6単位)、自然科学(6単位)、政治学(2単位)、経済学と合作組織(5単位)、社会学と中国社会問題(4単位)、民族運動(3単位)、調査統計(3単位)、農業概論(3単位)といった科目が設置された。このような科目は、民衆教育学系で専攻にとらわれず、幅広い教養を身につけ、見識を広めることを目的としていた。次の〈本系必修科目(合計46単位)〉においては、教育概論(2単位)、教育史(3単位)、民衆教育概論(2単位)、民衆教育実施法(3単位)、比較成人教育(2単位)、民衆教育哲学(2単位)、民衆教育専題研究(2単位)、心理学(3単位)、教育心理学(3単位)、成人学習心理(2単位)、実習(20単位)、卒業論文(2単位)といった科目が開講されており、教育学に関する基礎的な内容が含まれた。これらの専門分野を研究する土台でもある科目を通して、学生は教育学や心理学の基本的な方法論を習得した。また、実習の単位だけで〈本系必修科目〉の約4割を占めることから、教育学院においては、学生に教育実践の機会を提供し、教育現場で民衆教育の課題解決に取り組むことを重視する姿勢が強く窺える。また、前述のように民衆教育学系の下に、「組」のような形で専門分野が細分化され、郷村教育、工人教育、図書館、健康教育、社会教育行政、芸術教育、民衆科学教育といった7つの組が設けられた。第4学期から、学生はまず、その7つの組から1つの組を「主組」として選定し、さらに民衆教育学系や他の教育学系に開設された「組」から、「主組」以外の1つの組を「副組」として選定した。「主組」の科目より12〜20単位、「副組」の科目より8〜12単位の履修が必要であった。各組の開設科目は以下の通りである(表1)。このような〈分組科目〉の履修を通して、民衆教育の各教科に関する専門的な知識や技術を育成することが期待された。114

元のページ  ../index.html#120

このブックを見る