早稲田教育評論 第37号第1号
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 比べ読み教材例〇『詩経』「大序」と『古今和歌集』「仮名序」・「真名序」〈2社〉13〇漢詩「長恨歌」(白居易)と謡曲「楊貴妃」(金春禅竹)〈1社〉14〇漢詩「長恨歌」と『俊頼髄脳』「楊貴妃がことを詠める」(源俊頼)〈1社〉15  〇「題自画」(大正3年)〈1社1点〉1786⑶「古典探究」の教材の実際「古典探究」では、「古典における主体的な学習」を実践するために、探究的な学習として「比べ読み」が取り入れられている。比較する教材も、従来の「古文」「漢文」「現代文」のジャンルを越えている。その主な教材例を示しておく。5.教材研究⑴漱石「題自画」『漱石全集』には大正元年11月から大正5年の春にかけて詠まれた11首の「題自画」と題する漢文が載せられている16。その内、「古典探究」の教材となっている作品2首を挙げる。題自画  自画に題す      夏目漱石碧落孤雲尽  碧虚明鳥道通  虚遅遅驢背客  遅遅たる驢独入石門中  独り石門の中に入る                  (※書き下し文は教科書の訓点に従った。)(現代語訳:青空にちぎれ雲が流れ去っていき、透きとおって明るい大気に鳥のかよう路が通じている。のろのろと行くロバの背中の客人は、独り石門の中へ入って行く。)この漢詩は、従前「古典B」に採録されていた。そこでの設問は、「この詩に込められた作者の心情を考えてみよう」のように、学校現場の裁量で学習を進める形であった。これと比較すると、「言語文化」では学習活動の示し方に工夫が見られると言えよう。ここでは、前節で示した教材のうち「言語文化」教材の「題自画」と、「古典探究」教材の『詩経』「大序」・『古今和歌集』「仮名序」の比べ読みを取り上げて、教材研究という観点から作品を分析する。また、実際に授業で扱う際の留意点等も検討する。起臥乾坤一草亭 眼中唯有四山青 閑來放鶴長松下 又上虚堂読易経〇「題自画」(大正5年春)〈2社4点〉18唐詩読罷倚闌干 午院沈沈緑意寒 借問春風何処有 石前幽竹石間   また、「言語文化」でも、1社1点が大正元年11月の「題自画」を載せているので紹介する。へきらくきよめい落孤雲尽き明鳥道通ず背の客ろはい

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