早稲田教育評論 第37号第1号
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4.教材の扱い方の傾向と実際⑴教材の扱い方の傾向「言語文化」も「古典探究」も、採録している教材は従前と大きく変わらないということは前述のとおりであるが、今次改訂が掲げる「言語活動の充実」を受けて、学習活動の指示が具体的、かつ詳細になっている。これまでのように漢文を書き下し文にして現代語訳し、句法を学ぶだけではなく、複数の作品を読み比べたり(いわゆる「比べ読み」)、視覚的に捉える資料(映像や図画等)を活用して作品の理解を深めたりする学習活動が多くの単元で見られるようになった。また、作品理解を深める過程で、話し合いや発表のような活動も多く取り入れる傾向が認められる。⑵「言語文化」の教材の実際次に、「言語文化」では実際にどのようにして言語活動の充実を図っているのか、その教科書教材例を示しておく12。ここでは、「学びを広げる」という言語活動の単元として扱われ、資料教材として夏目漱石の漢詩「題自画」と、漱石の描いた図画〈孤客入石門図〉(これは山水画風の図画で、山に棚引く孤雲(ちぎれ雲。はぐれ雲)と、その下の山道をロバに乗った旅人が石門に入っていく様が描かれている。図画の上部には漢詩「題自画」が書き付けられている)が採られている。これらの資料教材に対して、「詩を読んで、図の内容について気付いたことを話し合ってみよう」という問いが設定されている。漢詩と図画を見比べてお互い意見交換しながら、漢詩の理解を深める学習活動である。次に漱石の「題自画」を示す。三省堂桐原書店東京書籍桐原書店大修館書店大修館書店三省堂明治書院三省堂文英堂明治書院桐原書店東京書籍桐原書店85義堂周信古典探究山茶花(空華集)義堂周信古典探究対花懐昔(空華集)古典探究自孟子有性善之言(論語徴)荻生徂徠古典探究「性非学者之所急」言性自老荘始。聖人之道所無也(弁道)荻生徂徠古典探究桂林荘雑詠 示諸生(遠思楼詩鈔)広瀬淡窓広瀬淡窓古典探究桂林荘雑詠 示諸生(遠思楼詩鈔)服部南郭古典探究夜下墨水(南郭先生文集)古典探究夜下墨水(南郭先生文集)服部南郭湯川秀樹古典探究『荘子』と素粒子(本の中の世界)湯川秀樹古典探究科学者のこころ(科学者のこころ)湯川秀樹古典探究本の中の世界『荘子』(本の中の世界)古典探究思君中野逍遥原善(念斎)古典探究野中兼山(先哲叢談)古典探究夏夜(湘夢遺稿)江馬細香

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