キーワード:言語文化、古典探究、漢文教材、日本漢文、平成30年告示学習指導要領、教科書教材【要 旨】本論文では、「言語文化」の教材研究をテーマとする研究部会の協議内容を踏まえ、「言語文化」と「古典探究」の漢文教材の傾向とその扱い方について論じる。平成30年に告示(以下、今次改訂とする)された「高等学校学習指導要領 国語」1は、日本の言語文化への理解を深め、その担い手としての自覚を涵養するために、「言語文化」(共通必履修科目)と「古典探究」(選択科目)を新設した。注目すべきは、「言語文化」の教材として「日本漢文」を適切に活用するよう明示したことである。そこで、まず、「言語文化」と「古典探究」の科目の特性を述べ、どのような教材を扱うかを「学習指導要領」に基づいて示した。次に、実際に採録されている漢文教材を調査し、従前の「国語総合」・「古典A」・「古典B」の採録教材と比較した。特に、「日本漢文」については中国古典作品の教材とは別に示し、採録状況を分析した。その結果、全体的には従前の教材とほぼ重複していることが分かったが、「言語文化」においては従前の「国語総合」では1点のみの採録であった「日本漢文」が、約27点に増加していることも明らかになった。これは、今次改訂による変革の一つである。次に、新設科目の教科書教材の言語活動を調査し、従前と比較してどのような違いが見られるか分析した。さらに、これらの調査・分析に対する研究部会で焦点となった意見や疑問点について検討し、従来の「古文」「漢文」の枠組みを超えた教材開発の必要性を述べた。新設科目を通して、漢文を学ぶことが日本文化の理解にとどまらず、東アジアの中の日本という位置付けに目を向ける契機とすべきであると提案する。1.はじめに─「古典嫌い」の解消になるのか─今次改訂の「高等学校学習指導要領 国語」では、「中央教育審議会答申(平成28年12月)」を受けて、「教材への依存度が高く、主体的な言語活動が軽視」されていることや「古典に対する学習意欲が低いこと」を課題として挙げている2。国語科ではこの課題を解消するために大幅な科目改変を行い、古典教育に関わる「言語文化」(共通必履修科目)と「古典探究」(選択科目)を新設した。また、「主体的な言語活動が軽視」されている現状を改善するため、各科目では古典における言語活動の実践例を挙げた。漢文3教育に関しては、「言語文化」の教材として「日本漢文」を適切に活用するよう明示したことが大きな改変と言える。「学習指導要領」で定義する「日本漢文」とは、「上代以降、近世に至るまでの間に日本人がつくった漢詩と漢文」4のことである。77─傾向と扱い方─漢文教材林 教子高等学校国語科「言語文化」「古典探究」における
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