早稲田教育評論 第37号第1号
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(2)タナナリブ会議おり、アフリカの教育の実情から判断すると総じて非現実的なものであったのである。アディスアベバ会議の翌年にあたる1962年の9月3日から12日にかけて、マダガスカルのタナナリブ(現アンタナナリボ)においては、ユネスコの主催による「アフリカ高等教育開発会議」(Conference on the Development of Higher Education in Africa)、いわゆるタナナリブ会議が開催された。同会議はアディスアベバ会議のフォローアップと補完を目的としたもので、アディスアベバ会議が初等・中等教育に焦点を当てた会議であったのに対し、タナナリブ会議は、高等教育および中等教育以降の教育を対象とした会議であった37。同会議の目的は、①高等教育カリキュラムの選択と適応に関する問題解決の方策を立てること、②高等教育事業の管理、組織、構造、資金調達における問題の解決策を明らかにし、その解決策が経済計画、教育、労働、農業等の関連省庁に与える影響を調査すること、③アフリカの高等教育機関に対する国際協力・開発・援助に関わる専門機関に、最も効率的にデータを提供する方法を検討することであり38、アディスアベバ会議で提示された長期計画の期間と同様に、1980年までが教育開発計画策定の対象となった。同会議には、アフリカの31カ国から約80名の代表者が参加し、この他、13カ国のユネスコ加盟国と1カ国の非加盟国から29名のオブザーバーが参加した。同会議では、諸問題に関する議論のため、3つの委員会と作業部会が組織された。第一委員会では、アフリカにおける高等教育の人員配置、第二委員会では、アフリカにおける高等教育の資金調達、第三委員会では、カリキュラムの選択とアフリカの状況への適応を主題に議論が交わされた39。これらの委員会での協議の結果、本会議では、「アフリカの教育開発計画の枠組みにおけるアフリカの高等教育開発のためのプログラム」と題して、11の大項目(①アフリカ諸国の文化的・社会的・経済的発展における高等教育の役割、②高等教育開発計画、③アフリカの高等教育の人材配置、④高等教育の財政、⑤カリキュラムの選択と適応、⑥アフリカ研究、⑦経済開発、⑧自然資源、⑨行政、⑩アフリカ間協力、⑪国際協力)に関する、合計97項目の提言をまとめている40。高等教育に係る数値的な目標としては、アフリカ大陸における最適な教職員と学生の比率や教育機関の規模が定められ、「今後20年間のアフリカにおける高等教育の発展に関する暫定的な目標として、1980年またはそれ以前に、国内外における高等教育への総入学者数の比率が、アフリカ中部では該当年齢層人口の1.5%以上、アフリカ北部では該当年齢層人口の5.9%以上に達すること」とされた(②高等教育開発計画の第11項)。また、高等教育への人材の配置に関しては、高等教育の発展速度と質を決定する主要な要因はアフリカおよび海外の人材にあるという見解のもと、1980年までにアフリカ人人員約1万4千人と外国人人員約7千人を任命・誘致すべく、特別勧告を行っている。また、「今後しばらくの間、かなりの割合のアフリカ人人員の訓練が継続して海外で行われることになるため、アフリカ以外の大学の施設を可能な限り提供し、高等学位だけでなく、教育や学部の管理運営に関する経験も提供すること」が提言された(③アフリカの高等教育の人材配置の第24項)41。高等教育分野に対する諸外国の支援は欠くべからざるものであるとされ、学位取得の目的だけではなく、教育の48

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