範俏慧は、現代中国の子育てにおいては、祖父母といった従来の育児資源は、子どもの性格形成や能力開発などの面においては不適切な担い手とみなされており、育児参加から排除・周辺化されていることを指摘した27。その結果、子どもの保育の責任は母親に集中しており、母親の育児負担が一層強化されるようになったと考えている。② 性別役割分業の定着と子育て責任の母親中心化M、NとOは共働き家庭なので、祖父母からの育児支援を必要としていた。しかし、この3人は等しく「もし可能であれば、自分で子育てしたい」と考えていた。Nはその理由について以下のように語った。Nが語ったように、祖父母の育児参加により、子育ての世代間における葛藤が生じている。育児の精緻化が進む現代中国では、子どもの養育が重要視されている中、若い世代の親にとって、祖父母の子育て参加には必ずしも協力的ではないことが、世代間葛藤が生じている原因の一つともいえよう。Pは現在、専業主婦として子育てしている。彼女は、子育ての役割分業について、以下のよう業を支えるために工場や企業内に設置された託児施設のほとんどが閉鎖された。例えば上海市の託児所の数は、2003年には184ヶ所であったものが2015年には35ヶ所までに減少した。2015年のデータによると、上海市の0〜3歳の子どもの入所率はわずか0.65%であった25。託児施設の閉鎖により、2000年代以降、乳幼児の保育はほとんど家庭内で行われるようになった。その結果、母親を中心として、祖父母が協力的に育児に参加するという「厳母慈祖」の家庭内保育スタイルが形成されるようになった26。第3世代の女性へのインタビュー調査では、3歳以前の子どもの世話について、ほとんどの女性は祖父母に子育て支援を求めていた。そのうち、MとOは自分の母が住み込みで子育てに協力してくれた。祖父母の子育て支援を求める理由について、「祖父母は託児施設や他の人より信頼できるから(O)」、「共働きなので、自分で子育てする時間がないから(M、N」がある。しかしながら、祖父母世代との教育観の差異から生じる葛藤もインタビューでは観察できた。「祖父母世代との教育観には差異があるので、私たちが子どもをしつける時にも、彼らは時々干渉してきた。その時は本当に困った。例えば、子どもが小さい頃にいい習慣をつけたほうが一番大切だと私たちは思っている。なので、もし子どもがちゃんとご飯を食べなかった時や、わがままの時には絶対に許してはいけないと思った。その時は必ず厳しくしつけした。しかし、祖父母は孫を可愛がっているので、私たちがしつけした時に子どもが泣くとはかわいそうと思って、私たちに干渉してくることがよくあった。」(N)肖索未が指摘したように、現代中国の育児においては、母親は子どもの管理者として、子どもの養育と教育の方針を決めるという母親中心型の育児スタイルが形成されている。その結果、育児をめぐる性別役割分業がさらに定着されるようになっている。に語った。31
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