早稲田教育評論 第37号第1号
31/228

ABCDEF2.調査方法と対象表1 調査対象者の属性対象出生年193319341937194019401942ローバル化が進んでいる現在、育児の精緻化と専門化による「徹底育児」(intensive mothering)の規範が浸透し、「科学的育児」規範の下で子どもの養育と教育を母親の手で行うべきであるという「スーパーママ」の母親規範が主流になっていると指摘した11。これまでの先行研究の多くは、マクロな視点から現代中国の育児不安を研究したものだが、ミクロな視点および母親規範の世代間変容から現代中国の育児不安を捉える研究は少ない。そのため、本稿では、インタビュー調査を用いて、異なる歴史時期を生きた母親たちの日常生活から現代中国の母親の育児不安のロジックを解明することを試みる。本研究では、安徽省蕪湖市に在住している1930〜1940年代生まれの第1世代の女性、1950〜1960年代生まれの第2世代の女性と1980〜1990年代生まれの第3世代の女性に向けて半構造化インタビュー調査を実施した。調査地である安徽省蕪湖市は、中国の東南部に位置する都市である。『蕪湖統計年鑑』(2021年版)によると、2020年末段階で、蕪湖市の総面積は6,026平方キロメートルであり、総人口数は388.5万人である。都市部在住者の年平均収入は44,588元であり、全国の平均レベルを占めている12。今回の調査で蕪湖市を取り上げた理由は、蕪湖市は都市規模、人口、経済発展水準において中国の平均的な水準であるため、調査結果の一般化が可能だと考えたためである。また、3世代の女性を取り上げる理由としては、計画経済時代(1949〜1978)と市場経済時代(1978〜)という2つの歴史時期における経済体制と保育制度の変容により、母親への役割期待が大きく変化したと思われる点である。調査を実施する際、調査目的と守秘義務について説明し、対象者の許可を得た上でインタビューを録音した。また、得られたデータは匿名で記録し、個人情報が特定されないよう配慮した。調査対象者の属性について、表1に示した通りである。世代第1世代職業学歴学校医大専卒13看護師中専卒14医師中専卒教員大卒教員大専卒エンジニア大卒25子どもの出生年19621965197319601965196219681964197119651966197019701973

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る