A先生によると、ここ数年、蕪湖市では、遠隔教育を通して地域間の教育格差を縮小させることを重視しているため、特に農村地域の小学校では、遠隔教育を円滑的に行えるために、教室でのICT環境の整備がさらに重視されている。 3.考 察六、山東省日照市における小中学校のICT教育状況と課題 1.日照市の概況ラムが実施されている。「同城課堂」は、農村部の子どもたちに、遠隔教育を通して都市部の小学生と同じ授業を受講させる取り組みであり、都市部との教育格差を縮めることが目的である。A先生によると、鏡湖区の隣接地域である金山地域は、教員の人数も質も足りないので、鏡湖区の質の高い学校では、インターネットを通じて、金山地域の子どもに遠隔教育を行う。具体的な方法として、まず、両校で、遠隔教育用の教室でのICT環境の整備を行う。金山地域の学校では、カメラがいくつか設置され、鏡湖区の小学校の教室がはっきり見えるように、スクーリンも設置されている。授業を行う際、主に都市部の小学校の教員を中心に授業を進める。金山地域の教員は、補助的な役割を果たし、農村部の子どもの問題を適宜解決する。しかしながら、今回の調査から、蕪湖市の学校教育におけるICTの活用は、小中学校に集中している一方、学力競争が厳しい高等学校での活用は明らかに少ないことが浮かび上がってきた。これからは、初等教育と中等教育前期課程だけではなく、中等教育後期課程と高等教育段階でのICTの活用もさらに研究する必要があるのではないだろうか(分担執筆:朱奕雷)。山東省の東南沿海地域における日照市は、2021年まで、小学校253校・小学生211,074名、中学校104校・中学生155,654名26を有している。教育情報化を促すために、日照市の教育局は、2010年から、基礎施設の建設、プラットフォームの設立と管理強化という三つのポイント27から取り組んできた。2014年まで、日照市は、合わせて2億元を教育情報化建設に投入した。「校校通」(学校同士をつなげるICT発展計画)を実現するために、デジタル化の教育資源を全市の全ての小中学校に共有させている。5200余りの「班班通」(クラスとクラスをつなぐICT発展計画)のための教室を建設し、その比率は79.3%に達しており、教員用のPC1.42万台、学生用のPC1.88万台が整備されている28。 2.調査対象本調査は、日照市経済開発区のG小学校の二人の教員を調査対象として実施された。一人はW先生(男性、34歳、数学)であり、もう一人はH先生(女性、31歳、国語)である。日照市教育局の統計データ、インターネットの新聞記事なども活用した。調査は主に日照市のICT施設と環境の整備状況、教員のICTの活用状況及び教員のICT活用能力を向上させるための研修実態を中心にして行われた。調査を実施した時期は2021年の11月である。189ICTを活用することで地域間の教育格差を縮小させることは中国の教育現場で大切な役割を果たしている。また、教育プラットフォームの整備は、学校と家庭の連携と教員の教務軽減には不可欠な効果を果たしているともいえよう。
元のページ ../index.html#195