同じ教科を担当する教員たちは、WeChatグループチャットを作成し、そこで授業に関する情報を共有する。さらに、生徒の状況や家庭の様子を把握するため、同じクラスの教員と保護者たちはWeChatグループチャット内で、学習や生活の情報を共有する。学業のほかには、生徒のメンタルヘルスへの支援も行われた。在宅学習ホットラインを設置し、毎日15:00〜17:00の間では、電話で何でも先生と相談することができる。また、在宅学習から生じたマイナス感情をいかに解消できるかということをテーマにして、メンタルヘルスの講座を開いた。同時に、家庭で運動することを重要視し、WeChatグループやWeChatの公式アカウントで、家でできる運動を紹介した。さらに、低学年の生徒たちにコロナの状況をよりよく理解させるために、『コロナ絵本』を作成した。このようなことを通して、学業のみならず、生徒の生活全般への支援が進められた。 (3)ICT活用と教員研修クロラーニングの作り方という、授業づくりに役に立つ技能の習得がメインである。またICTの活用によって、従来型の対面で行われる教員研修は、スマホでQRコードを読み取るだけで参加できるようになった。このことは教員の時間的負担を大きく軽減した。さらにオンラインのみならず、対面でのワークショップ型の研修も行われた。教員たちは研修を受けながら、パソコンで実際に操作をしたり、話し合いをしたりして、その場でICTを活用した授業づくりを体験できる。こういった内容は、授業力の向上とつながるため、教員たちのICT活用に関する研修を受ける意欲は高い。 (4)ICT活用と教育格差教育格差を縮めることにつながる対策や施策に関しては、前述の教育プラットフォームがその1つの有効手段と思われる。農村地域でも、生徒は都市部と同じように質の高い授業を受けられるようになった。さらに、授業はテレビでも受講できるため、インターネット環境が整っていない農村部の生徒でも受講しやすいと考えられる。そのほか、地域における教育格差を縮めるために、江蘇省では「城郷互動課堂」という農村小中学校遠隔教育プログラムを実施した。都市部小学校の教室に大きなスクリーンを設置し、スクリーンに農村部小学校の教室の様子を映す。都市部の生徒たちは普段のように対面授業を行っているが、農村部の生徒たちはオンライン授業のように、教室にあるスクリーンを見ながら授業を受ける。授業中、農村部の生徒たちは受動的に授業を聴講するだけでなく、先生が質問をするときに、農村部の生徒たちも回答することができる。このように農村部の生徒たちの参加が確保されるようになった。しかしながら、遠隔教育プログラムを行う農村部の小学校はまだ少ない。同時に、このプログラムが行われても、実際には1ヶ月一回、あるいは2ヶ月一回の頻度で開催するため、その教育効果はまだ実感できないと考える。 3.考察:ICT活用は教育格差を解消できるか中国では、できるだけ多くの学生が平等で質の高い教育を受けるために、農村小中学校遠隔教育プログラムなどの新しい形態の授業が行われ、また教育プラットフォームで質の高い授業を社186ICT教育のための教員研修は各学校とも実施されているが、その内容はパワーポイントやマイ
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