P中学校では、コミュニケーションツールとして「WeChat Work23」を使用している。中学校段階では、情報技術という科目があり、同校では、教科の学習で生徒にICTスキルを習得させた上で、生徒が現実課題や学習の必要に応じて、多様な道具・ツールを組み合わせて問題解決する能力の育成を重視している。また、同校は、生徒の宿題の正答率や完成率が自動的に計算できる宿題のプラットフォーム「閔智宿題(闵智作业)」を使用し、生徒のつまずきに即座に対応している。 (4)ICTを活用した学習資源の共有端末を導入している。P中学校では、BYOD学校(Bring Your Own Device)を週に二日実施しており、決まった日に生徒が自分のパソコンや電子設備を学校に持参し、学習に使用している。 (3)ICTを活用した授業作りと学校の業務改善Q小学校はアリババが開発した無料教育プラットフォーム「DINGTALK」を使用している。その機能は、校内会議、オンライン授業、教務管理、児童の学習管理、宿題の提出、メッセージなどがある。同校は、学習の個性化と児童の積極性・自主性の向上を目指し、学校のWeChatのアカウントにて、「微課」(5-25分で学習できる小レッスン)を児童に発信している。内容は芸術類、体育類、ものづくり、読解、現実生活での課題解決などの多岐に渡り、児童の興味関心や各教科の学習内容に合わせて設計している。教師が文字、動画、写真の組み合わせた学習資料を投稿しているが、児童がそれらを学習した上で学習成果を発信している。また、デジタル教材の活用と児童の学習状況の即時確認を実験的に進めており、教師が随時に児童の宿題や課題の達成度を確認し、できていない児童を即座に個別指導している。Q小学校では、協定校の間に全ての教案、学習資料を共有しており、教師が児童の実情に応じて、学習内容を調整している。教師が教案を作成する業務量の軽減を目指しているが、より質の高い教案が求められるため、授業の質的向上にも繋がる。P中学校では、学校が所在する地域における教育資源の共有を進めており、現在同じ地域の五つの中学校と、発展型課程、サークル活動の教育資源を共有している。そのほか、新疆の中学校の教育支援も行っており、教科の学習資源や教案を共有し、遠隔授業も行っている。 4.考 察調査対象校のQ小学校とP中学校は、どちらも情報技術を日常の教育実践に融合していることが見られた。しかし、中国の農村部や他の地域に関して、また実情が異なってくる。実際に、インタビュー調査では、ICTの活用による農村部の学校への教育資源の共有や遠隔教育などの教育支援を積極的に進めているものの、都市部と農村部の教育設備環境や児童生徒の実情が異なるため、あまり効果的ではない場合があるということを両校の教師が指摘している。また、ICTの活用をめぐる児童生徒の指導、SNSでの発信、ICTツールの学習、学習資料の作成、保護者との連絡などを含め、以前よりも教員の業務の量が増え、教員のさらなる多忙化を促す一因にもなっているということがインタビュー調査から明らかになった。教育情報化を推進する上で、農村部の教育環境や教員の働き方をいかに改善していくかは今後の課題になるだろう(分担執筆:周珏)。184
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